メンタルモデル
ウェブユーザビリティを改善するための基本としておさえておきたい知識として、メンタルモデルがあります。メンタルモデルとは認知心理学の用語ですが、「あることに出くわしたときに、それをどう解釈、判断し行動するか」について、ユーザーの頭の中に形成されるモデルのことです。
このモデルは、個々人がこれまで生きてきた中で蓄積されてきた経験を基に作られてゆくものなので、その人の習慣や育ってきた環境、文化などによって変わってきます。こうして形成されたメンタルモデルは、知らず知らずのうちに人の行動に大きな影響を与えます。たとえば以下のようなものです。
- 自宅の洗面台の水栓レバーは上げると水が出る (下げると水が止まる) のに、訪問先では逆だった (水栓レバーを下げると水が出る) ので、一瞬、水を出せなかった。
- 海外 (自動車が右側通行の国) で左ハンドル車をレンタルして運転中、ウィンカーを出そうとしてハンドル右側のレバーを操作したら、ワイパーが動いてしまった。
- 東京ではエスカレーターに乗るときは左側に立つのが普通 (右側は追い越す人のために空けておく) なのに、大阪に行ったら逆で、追い越そうとする人の邪魔をしてしまった。
ウェブサイトにおいても、メンタルモデルの例はいろいろとあります。代表的な例としては、リンク箇所の識別 (下線が引いてある/青色になっているテキストはリンクだと認識する)、ボタンかどうかの識別、アイコンの意味の理解、ブラウザの「戻る」ボタンを押したときの挙動...などが挙げられるでしょう。普段のウェブ利用を通じて蓄積された経験から、ユーザーは無意識的に、ユーザーインターフェース (UI) に付随するアクションとリアクションを予想します。そして予想通りに挙動しない場合、フラストレーションを感じるのです。ユーザビリティに優れた UI にするためには、各 UI 要素がユーザーのメンタルモデルに合致していること、ユーザーの予想 (期待) どおりに挙動することが鍵といえるでしょう。