ユーザーの「コンテキスト」を意識する

Web サイトを設計する過程で、「ユーザーの "コンテキスト" を意識しよう」といった会話が最近よく聞かれるようになった気がします。この「コンテキスト」という言葉、英語の「context」をカタカナ表記したもので「文脈」と訳されることが多いですが、いまひとつピンと来ない方も多いのではないでしょうか。適切な日本語表現があればよいのですが、なかなか無いため外来語 (カタカナ語) が使われている...というのが実際のところだと思います。

ユーザーの目的到達に影響する様々なものごと

ユーザビリティの優れた Web サイトを設計するために「ターゲットユーザー」や「ゴール (目的)」を明確にしよう、という話はよく聞くと思います。「コンテキスト」とは、その「ユーザー」が「ゴール (目的)」を達成しようと行動することに対して影響する、様々なものごとと考えることができます。たとえば、以下のような例が挙げられるでしょう。

上記以外にも色々あるかもしれませんが、いずれにせよ、「ユーザー」や「ゴール (目的)」が同じ (あるいは類似) でも、「コンテキスト」が違うと、ユーザーが享受するユーザビリティも異なってくることは、想像できるかなと思います。

コンテキストを意識し続けることが大切

「コンテキストを意識しよう」と最近になってよく言われるようになった大きな背景としては、スマートフォンの急速な普及に端を発して今後益々「当たり前」となってゆくであろう、Web へのアクセス手段の多様化が挙げられると思います。

Web へのアクセス手段の多様化は、上記の箇条書きのうち、単に「利用環境」の変化 (従来のような「部屋やオフィスで PC を使う」に加えて、スマートフォンやタブレットも使えるようになった) をもたらすだけに留まりません。「いつでもどこでも」アクセスできるようになった分、「日時」や「場所」(特に屋外であれば「天候」も)、さらにはそのときの「前後の行動」や「心理状態」など多くの要素にも同時に影響し得ることを、理解しておく必要があります。

様々なコンテキストにどう対応するかは、個々のサービスによって異なってくるでしょう。特定のコンテキストにフォーカスを当てて最適化したデザインをするというやりかたもあれば、多種多様なコンテキストの違いをできるだけカバーできるようにデザインするというやりかたもあります。もちろん、ユーザーの位置情報や時刻などを取得して動的に提示する情報を変えるという手もあります。いずれにしても大切なのは、サイトを設計/構築するときはもちろんのこと、サイト公開後の運営フェーズ (日々のコンテンツのアップデート) においても、ユーザーのコンテキストを意識し続けることだと思います。