サイトマップのページは必須か?

サイトマップとは、Web サイトを構成する各セクション/各ページへのリンクを一覧表示したページです。数多くのサイトが備えていますが、以下に図示するように、各コンテンツの位置関係 (階層構造) が整然と並んでいるのが一般的です。

サイトマップの例 (アップルの Web サイト)
サイトマップの例 (アップルの Web サイト)

ユーザビリティのガイドラインとして、このようなサイトマップのページを設けることは必須である、という話を聞いたことがある人も多いと思いますが、ここ最近、私自身の中で「果たしてサイトマップは本当に必須なのか?」「サイトマップがないとユーザビリティが本当に阻害されるのか?」と自問自答する機会が度々あったので、考えをまとめてみようと思います。

サイトマップの必要性

サイトマップの効用としては、以下のようなことが、よく言われています。

このように言われている一方で、「実際にユーザーはサイトマップを有効利用しているのだろうか」という気も正直しています。

私自身の経験の範囲内ですが、ユーザビリティテストでユーザー行動を観察していると、目的の情報が見つからない場合に「次善の策」としてサイトマップを探してアクセスするユーザーは、実はあまり多く見られないのです。タスクの遂行をあきらめる (≒そのままサイトを離脱してしまう) というケースがほとんどだったりします。

そう考えると、サイトマップのページは、必ずしも必須ではなく、どちらかと言うと「あったら便利 (nice-to-have)」くらいの位置づけではないか、とさえ思えてきます。以下、もう少し掘り下げてみましょう。

本来ユーザーはサイトの全体構造には興味がない

本来ユーザーは、Web サイトで各自の目的を達成したいだけであって、サイトの構造がどうなっているのかや、自分がやろうとしていることがサイト全体の中でどう位置づけられているかについては、興味がないはずです。

それでも昔は、ホーム (トップページ) から階層を辿って目的のコンテンツに進んでゆくという動線が普通だったので、サイトマップのようにサイト全体の構造を見渡すことができる機能というのは、それなりに便利だったのだと思います。

今日では、検索エンジンやソーシャルメディアでのシェアを通じて、ホーム (トップページ) を経ずに直接、目的のコンテンツにアクセスするケースがほとんどです。そういう意味では、サイト全体の構造を見渡すことができる機能というのは、昔ほどは求められていないのではないでしょうか。

多くのサイトではクローラー専用のサイトマップファイルを用意している

検索エンジンのロボット (クローラー) が巡回しやすくなるための方策としては、人間の目に見えるサイトマップページではなく、クローラー専用の、XML で記述されたサイトマップファイルを用意するケースが多いと思います。

Google でも公式に XML サイトマップを使うことを推奨している (参考 : サイトマップについて - ウェブマスター ツール ヘルプ) ので、SEO を多少なりとも意識しているサイト制作者/運営者であれば、すでにこういったクローラー専用 XML サイトマップを作成済みなのではないでしょうか。

「メガドロップダウンメニュー」や「ビッグフッター」によるサイトマップ機能の担保

最近は、「メガドロップダウンメニュー (Mega Dropdown Menu)」や「ビッグフッター (Big Footer)」といった新しいスタイルのナビゲーションも登場しています。サイト全体を見渡しながら、目的の情報にリンクすることができるという意味では、これらがサイトマップの機能を担保していると言うこともできそうです。

メガドロップダウンメニューの例 (Starbucks Coffee)
メガドロップダウンメニューの例 (Starbucks Coffee)
ビッグフッターの例 (Starbucks Coffee)
ビッグフッターの例 (Starbucks Coffee)

「メガドロップダウンメニュー」や「ビッグフッター」を採用すると、サイト内のどのページにいても、サイトのアバウトネス (全体像) をつかむことが可能になるので、従来のように別途サイトマップのページを設けてそこにわざわざアクセスしてもらうよりも、格段に便利と言えそうです。こういったナビゲーションスタイルが多くのサイトでも定着すると、サイトマップのページの存在意義は、ますます低下してゆくような気がします。


この記事では、「サイトマップは不要である」と言いたいわけでは決してありません。サイトマップのページがユーザビリティを阻害するということはまったく無いので、「あったら便利 (nice-to-have)」くらいの位置づけで存在する分には何ら問題ないと思っています。

ただ、「ユーザビリティのガイドラインとして、そうすべきであると聞いたことがある」という理由だけで実装していると、いつのまにか、ユーザーの利用実態に合わなくなってる (実はそれほど役立っていない) …ということも、もしかしたら無くはないかもしれません。サイトマップというひとつの題材から、そんなことを考えてみるのも、面白いと思います。