ウェブデザインとは情報設計である (情報アーキテクチャへのイントロダクション)
「デザイン」とは何でしょうか?話をしていると「外観や質感の良し悪し」という意味で「デザイン」という言葉が使われることが多いように感じます。
もちろんデザインによる成果物は、結果的に、モノの外観や質感をよくすることになることが多いのですが、ことウェブサイトのデザインという観点で考えると、それだけでは不十分であることに、留意する必要があります。
もともと英語の「design」という言葉には、設計する、策定する、考案する、計画する…といった意味が含まれています (参照 : アルク 英辞郎 on the WEBの「design」の検索結果)。となると、「ある目的や意図のために、無秩序状態から秩序を作り出したり、混沌とした状態を整理したりすることで、興味を喚起して人を動かすこと (そのための施策や技法)」が「デザイン」なのかな、と私は考えています。
さて、ウェブサイトの構成要素としてもっとも肝となるのは、言うまでもなくコンテンツ (情報の中身) です。ウェブサイトをユーザーにとっての目的達成 (課題解決) のための手段と捉えれば、ウェブデザインとは「情報を秩序立て、整理して実のあるコンテンツとして提示することで、ユーザーを目的達成 (課題解決) に導くこと」と言えるでしょう。端的に言うと、「ウェブデザインとは情報設計である」という考えです。
この「ウェブデザインとは情報設計である」という考えを端的に表わす概念として、「情報アーキテクチャ (Information Architecture : IA)」という言葉があります。リチャード・ソール・ワーマン (Richard Saul Wurman) という米国の建築家/デザイナー (カリフォルニア州のイエローページの情報分類法を再定義した人として有名です) が先駆者と言われており、ウェブ以前からあった概念ですが、「複雑な情報を、わかりやすく伝える設計技術」という意味です。
そしてこの「情報アーキテクチャ」という概念は、ルイス・ローゼンフェルド (Louis Rosenfeld) とピーター・モービル (Peter Morville) の両氏による「Web 情報アーキテクチャ — 最適なサイト構築のための論理的アプローチ」(いわゆる「シロクマ本」) という本で、広くウェブ関係者に知られるようになります。
私自身、この本に多大な影響を受けた一人ですが、もはや古典とも言えるこの本を時折読み返すたびに、「ウェブデザインとは情報設計である」という想いを強くします。デザインをくれぐれも「外観や質感の良し悪し」という限定的な意味で語ってはならないという戒めとして、これからも大切にしたい一冊です。