ニールセン/ノーマンによるユーザーエクスペリエンスの定義

当サイトのコラム記事「ユーザーエクスペリエンスとは?」で、ユーザーエクスペリエンスとはどういう概念かを、できるだけ平易に説明してみましたが、今回はもう少し権威のある、ちょっとアカデミック(?)な定義をご参考までにご紹介したいと思います。

そもそも「ユーザーエクスペリエンス(UX)」という概念は、認知心理学者で、米国アップルコンピュータ(現アップル)の「ユーザーエクスペリエンスアーキテクト(user experience architect)」としても活躍していたD.A.ノーマン博士が、「ヒューマンインターフェイス」や「ユーザビリティ」よりも幅広い概念を示すために造語したものが由来とされますが、彼がWebユーザビリティの第一人者と言われているJacob Nielsen(ヤコブ・ニールセン)氏と共同で設立したコンサルティング会社「Nielsen Norman Group」では、次のように定義されています。

User Experience - Our Definition

"User experience" encompasses all aspects of the end-user's interaction with the company, its services, and its products. The first requirement for an exemplary user experience is to meet the exact needs of the customer, without fuss or bother. Next comes simplicity and elegance that produce products that are a joy to own, a joy to use. True user experience goes far beyond giving customers what they say they want, or providing checklist features. In order to achieve high-quality user experience in a company's offerings there must be a seamless merging of the services of multiple disciplines, including engineering, marketing, graphical and industrial design, and interface design.

出典URL:http://www.nngroup.com/about/userexperience.html

上記を日本語にすると、以下のようになります。

ユーザーエクスペリエンス - 私たちの定義

「ユーザーエクスペリエンス」は、エンドユーザーと、企業およびそのサービスや製品との相互作用について、あらゆる面を対象として含みます。典型的なユーザーエクスペリエンスの第一要件は、イライラや面倒なしに、顧客のニーズを正確に満たすことです。その次の要件として、製品に所有する喜びや使用する喜びをもたらす簡潔さと気品が求められます。真のユーザーエクスペリエンスは、単に顧客が欲しいと言ったものを提供したり、顧客が期待した機能を提供したりするだけには留まりません。企業が高い質のユーザーエクスペリエンスを実現するためには、多くの専門分野、たとえばエンジニアリング、マーケティング、グラフィックデザイン、工業デザイン、インターフェースデザインなど、をシームレスに統合することが必要です。

(以上、筆者による和訳。)

この定義ですが、「Our Definition(私たちの定義)」と書いてあるように、あくまでも私的な、Nielsen Norman Groupが彼らの活動の拠り所となるように策定したものにすぎないことに留意する必要があります。これは「ユーザーエクスペリエンス」という概念には、ユーザビリティのようにISOによる公式な定義があるわけではなく、「ユーザーエクスペリエンス」という概念をどう定義するかは人によって異なるという現状を反映していると言えるでしょう。

正直、このNielsen Norman Groupの定義を見ても、ピンと来ない方もいらっしゃるかもしれませんね(正しい定義法(「user experienceとは〜である」といった具合)で書かれた文面ではないので、定義の表現方法としては、あまり良い例とは言えないかもしれません)。それでも、ユーザーエクスペリエンスの検討対象となる範囲が示されていることと、複数の専門分野が融合して初めて成り立つものであることを明示しているという点で、とても参考になる定義だと思います。