ページネーションのための基本マニュアル

Web サイトの IA (情報アーキテクチャ) あるいは情報デザインを検討する際には、紙媒体 (書籍) のエディトリアルデザインが参考になることがあります。もちろん、紙媒体と Web とではメディアの特性やユーザー行動が異なるので、紙媒体のノウハウをそのまま Web に適用できるわけではありませんが、Web よりもはるかに長い歴史の中で培われてきたエディトリアルデザインの手法は、「情報をいかに見やすく/わかりやすくユーザーに提供するか」という意味では Web サイトの情報デザインに通じるところがあるので、知っておいて損は無いと思います。

今回はこのエディトリアルデザインの手法をまとめたもののひとつとして、「ページネーションのための基本マニュアル」という冊子をご紹介します。

「ページネーションのための基本マニュアル」表紙

このマニュアルは、デザイナーの鈴木一誌氏によって1996年に発表され、以後、DTP 環境の進化などに対応して改良が重ねられています。最新版 (この記事の執筆時点では 2010年10月に発行) は、PDF およびドットブック (.book) 形式で無料公開されています。ちなみに PDF 版は2種類のサイズ (A5版とA8版) が用意されていて、それぞれ iPad および iPhone で読むのに最適な大きさに作られています。

内容的には基本的に紙媒体 (書籍) の編集作業を想定しているので、Adobe InDesign の使いかたに関する言及があったり、色指定に CMYK を使う旨の記述があったり、耳慣れない印刷関連用語が出てきたり (柱、ノンブル、奥付など)...と Web 系の人は若干戸惑いを覚えるかもしれません。とはいえ全体的にはエッセンスが簡潔にまとめられていて、敷居の低い内容になっていると思います。

「受け手 (ユーザー) に伝わりやすくデザインするにはどうしたらよいか」という観点でひととおり目を通してみると、色々な気づきが得られると思います。また、情報デザインの様々な要素、たとえばページレイアウト、文字サイズや行間 (行送り) の指定、段落などのスタイリング、見出しの付けかた/見せかた、テキストの表記法 (仮名づかいやカタカナ表記、読点や括弧の使いかた)...など、自身のデザインの妥当性を確認する裏付けのひとつとして活用することもできます。