コーディング Web アクセシビリティ (電子書籍版)

先に書籍レビューをさせていただきました「コーディング Web アクセシビリティ — WAI-ARIA で実現するマルチデバイス環境の Web アプリケーション」が、このほど電子書籍化され2017年3月30日に発売されました。出版元のボーンデジタルさんより見本誌をいただきましたので、ご紹介したいと思います。

本書の公式情報およびお試し版のダウンロードは、株式会社ボーンデジタルさんのサイトをご覧ください。 「コーディング Web アクセシビリティ (電子書籍版)」をマルチデバイスで表示

情報アクセシビリティにこだわった EPUB 制作

姉妹本「デザイニング Web アクセシビリティ (電子書籍版)」と同様、本書の電子書籍版も PDF と EPUB ファイルがパッケージされています。Kindle で読みたい方は、出版元のボーンデジタルさんのサイトから購入すると、Kindle用に調整した EPUB ファイルもパッケージに付属します。または、Kindle 版を Amazon で直接購入することもできます

情報アクセシビリティを題材にした書籍であるだけに、本書の EPUB ファイルは「リフロー †」が徹底的にデザインされていて、読者の閲覧環境に応じて読みやすく配慮されています。また、電子書籍リーダーや閲覧アプリの機能によって文字サイズを大きくしたり背景色を変えたりフォントを変えたりして可読性を調整できるので、紙よりも柔軟な形で、情報アクセシビリティが向上していることを実感できます。

† 註 : 「リフロー」とは電子書籍の用語で、ウェブのフロントエンド技術 (HTML や CSS など) を活用してコンテンツを形成することで、画面幅に応じて読みやすい形に (ウェブサイトで言うところのレスポンシブデザインのように) 誌面を提示することを言います。

監訳者のひとり、伊原力也さん (@magi1125) が下記のツイートをしていますが、EPUB 制作にあたってはこのように RS (Reading System : 電子書籍の閲覧環境) に応じた工夫も実践されているようです。個々の閲覧環境ごとの「個別最適化」に陥らず、制作作業効率とのバランスをうまくとりながらこのような工夫を採り入れる (何をして、何をしないかを見極める) のは簡単ではなさそうですが、そのあたりのさじ加減やベスト (?) プラクティスについては、機会があればぜひじっくりお話を聞いてみたいと思います。

電子書籍版ならではの使用感

本書は、ウェブサイトやウェブアプリケーションを制作する際に、HTML + CSS + JavaScript と共に WAI-ARIA をどう用いたらよいかを解説した書籍であり、昨今多くのウェブサイトで見られるインタラクティブな UI (折り畳み/展開、タブ、アラート、モーダルウィンドウ、など) の具体的なコーディングについてもしっかりおさえられています。本書と併せて、実際に挙動を確認できるデモが著者 Heydon Pickering 氏のウェブサイト「Practical ARIA Examples」に公開されているのですが、紙版においては脚注として各デモの URL が記載されているところ、電子書籍版では文脈の中でハイパーリンクになっているので、「本書を読みつつデモを参照する」という流れがとてもスムーズになり、心地よい読書体験につながっているように思います。

また、紙版のレビュー でも書いたように、本書はとても軽妙な語り口の、「リファレンス」というよりは「読み物」といった雰囲気の本になっています。そのため、個人的な印象ではありますが、スマートフォンのようなハンディなデバイスで、いつでもどこでもサクサク読み進めるのにも向いているように感じました。

日本語で読める WAI-ARIA の (特に入門的な) 情報が少ない中、今回の電子書籍化によって、本書がさらに多くのウェブ制作関係者の目に触れることを期待しています。気軽に本書を楽しんでいただくことを通じて、WAI-ARIA の概念や可能性を適切に理解し、実装上の勘所をおさえ、様々なインタラクションに応用できる人が増えたらいいな、と思います。