インクルーシブ HTML + CSS & JavaScript — 多様なユーザーニーズに応えるフロントエンドデザインパターン (電子書籍版)

日本語版レビュワーとして関わらせていただきました書籍「インクルーシブ HTML + CSS & JavaScript — 多様なユーザーニーズに応えるフロントエンドデザインパターン」が、このほど電子書籍化されました。出版元のボーンデジタルさんより見本誌をいただきましたので、ご紹介したいと思います。

本書の公式情報およびお試し版のダウンロードは、株式会社ボーンデジタルさんのサイトをご覧ください。 「インクルーシブ HTML + CSS & JavaScript — 多様なユーザーニーズに応えるフロントエンドデザインパターン (電子書籍版)」をマルチデバイスで表示

インクルーシブな読書体験をもたらす「リフロー」の徹底

本書は、ウェブサイトやアプリケーションのユーザーインターフェースデザインについて、「インクルーシブ」という言葉をキーワードに、あらゆる障害や状況を抱えたユーザーに対しても分け隔てなく ("inclusive" に) 優れたユーザーエクスペリエンス (UX) を提供しよう、と説いている本です。

今回ご紹介する電子書籍版 (EPUB ファイル) ではそのスピリットを体現すべく、「リフロー †」が徹底的にデザインされていて、読者の閲覧環境に応じて読みやすくなるよう配慮されています。電子書籍リーダーや閲覧アプリの機能によって文字サイズを大きくしたり背景色を変えたりフォントを変えたりして可読性を調整でき、またスクリーンリーダーによる音声読み上げも可能なので、紙よりも柔軟な形で、情報アクセシビリティ (本書では「インクルーシビティ」という言いかたをしています) の担保を実感することができます。アクセシブルな電子書籍の1モデルケースとして見ても、面白いでしょう。

† 註 : 「リフロー」とは電子書籍の用語で、ウェブのフロントエンド技術 (HTML や CSS など) を活用してコンテンツを形成することで、画面幅に応じて読みやすい形に (ウェブサイトで言うところのレスポンシブデザインのように) 誌面を提示することを言います。

なお、Kindle で読みたい方は、出版元のボーンデジタルさんのサイトから購入すると、汎用的な EPUB ファイルに加えて、Kindle 用に調整した EPUB ファイルもパッケージに付属します (ご購入者ご自身にて、.mobi または .azk への変換作業が必要です)。よりお手軽に、Kindle だけで読めればよいという方でしたら、Kindle 版を Amazon で直接購入することもできます。

電子書籍版ならではの使用感

紙版のレビューでも書きましたが、本書は書名に「デザインパターン」とありながらも、いわゆるパターンランゲージ的なアプローチというよりは、手取り足取りな「チュートリアル」という印象の本で、読み物として楽しむことができます。そのため、スマートフォンのようなハンディなデバイスで、いつでもどこでもサクサク読み進めるのにも向いているように感じます。

内容的には一貫して「HTML の持つセマンティクスをよく理解し、意味的に正しくマークアップする」「プログレッシブエンハンスメントの思想に基づいて適切に CSS や JavaScript を用いる」「各種インタラクションにおけるセマンティクスの担保として WAI-ARIA を適切に用いる」ことを説くもので、具体的なコード例を伴った形で丁寧に解説がなされていますが、(Kindle 版を除く EPUB ファイルでは) モノクロ印刷の紙版と異なり色が効果的かつ一貫性のある形で用いられているので (シンタックスハイライトで色分けがなされている)、とても見やすくなっています。

色と言えば、本書では参考 URL も数多く紹介されていますが、電子書籍版では当然これらはハイパーリンクになっていて、下線付きの青色文字 (Kindle の場合は、Kindle 標準のリンク色) で提示されています。リンク箇所を瞬時に識別できて、タップひとつで参照先に手軽にアクセスできるのは、電子書籍ならではの読書体験でとても快適です。

コード例のシンタックスハイライトやリンクなど、色が効果的かつ一貫性のある形で用いられていて見やすくなっている。(EPUB ファイルを iPad の iBooks アプリで表示した例)
誌面の写真

本書の内容について詳しくは紙版のレビューをご参照いただければと思いますが、そこでもご紹介しているように本書は、読み進めてゆくことで、インクルーシブな (誰もが利用できる) ユーザーインターフェースを具現化するための根本的な考えかたを身に付けることができる良書と言えます。今回の電子書籍化を機に、ウェブの設計や制作に関わるより多くの方々の目に本書が触れることで、「インクルーシブデザイナー」に共鳴する人が増えてゆくことを期待したいと思います。