The WebAIM Million (100万のホームページに対するアクセシビリティ自動検証) : 2021年の調査

ウェブアクセシビリティ向上のために活動している米国の非営利団体 WebAIM (Web Accessibility in Mind) が実施した、「The WebAIM Million」という調査があります。The Majestic Million などを基に、メジャーどころの100万ウェブサイトを採り上げ、ウェブアクセシビリティ検証ツール「WAVE」のエンジンを用いて自動検証を行ない、定量的に傾向を分析する、というものです。

今回、その第3回となる調査が、2021年2月に行なわれました。前回の調査から1年後、どのような傾向が見られたのでしょうか。調査結果の詳細は WebAIM サイトの「The WebAIM Million」でご覧いただけますが、以下、気になるものを抜粋します。

全体的なエラー件数の推移

100万ページでトータル51,379,694件のエラー、つまり1ページあたりの平均で51.4件ものエラーが検出されています。2020年の結果 (平均60.9件)、2019年の結果 (平均59.6件) と比較すると1ページあたり10件近くエラーが減っている計算となり、少なからず改善しているように見えますが、WAVE が検出する「エラー」は、ユーザーに著しい影響を与えるアクセシビリティ上の問題 (WCAG 達成基準のレベル A および AA への不適合に相当する状態) を指摘するものであり、この数字はまだまだ楽観視できるものではないと言えるでしょう。

WCAG への不適合

97.4%のホームページで、何らかの WCAG への不適合が検出されています。2020年の98.1%という結果と比較すると若干改善されている印象を受けますが、主な WCAG 不適合の種類ごとに見てみると、以下の通り、良くなっているものもあれば悪くなっているものもあります。

主な WCAG 不適合が検出されたページの割合
WCAG 不適合の種類2021年2020年2019年
低コントラストのテキスト86.4%86.3%85.3%
画像の代替テキスト不備60.6%66.0%68.0%
フォーム入力要素のラベル不備54.4%53.8%52.8%
空のリンクラベル51.3%59.9%58.1%
ページ全体の lang 設定不備28.9%28.0%33.1%
空のボタンラベル26.9%28.7%25.0%

テキストのコントラスト

上のテーブルが示すとおり、ほとんどのページ (86.4%) で、WCAG 達成基準 (AA) を満たさない低コントラストのテキストが見られます。

なお、各ページあたりで見ると、低コントラストのテキストのインスタンスは、平均して31箇所という結果になっています (2020年の調査では平均で36箇所)。

画像および代替テキスト

上のテーブルが示すとおり、6割のページで、画像の代替テキスト不備が見られます。

なお、今回の調査対象では合わせて37,948,510枚の画像が検出されており、平均して1ページあたり37.9枚の画像があることになりますが、このうち26%、つまり1ページあたり平均10枚の画像で、alt 属性の不備がある、という結果になっています (alt があって属性値が空のものは除く)。なお、その約半数はリンク画像です。(2020年の調査では、alt の不備がある画像は31.3%です。)

フォーム入力要素のラベル

上のテーブルが示すとおり、5割を超えるページで、フォーム入力要素のラベル不備が見られます。

なお、今回の調査対象では合わせて440万ほどのフォーム入力要素が検出されていますが、その半数近く (45%) は適切なラベル付けがなされていない (<label> 要素、aria-label 属性、aria-labelledby 属性、のいずれも実装されていない) という結果になっています。(2020年の調査では、適切なラベル付けがなされていないフォーム入力要素は55%です。)

見出し

38.4%のページで、見出しレベルのスキップ (例 : <h2> の次は <h4>、といった具合) が見られます (2020年の調査では39.1%)。

10.6%のページで、見出し要素がまったく存在しません (2020年の調査では12.4%)。

18.4%のページで、複数の <h1> 要素が存在しています (2020年の調査では20.5%)。

ランドマーク

69.1%のページで、1つ以上の WAI-ARIA ランドマークが実装されています (2020年の調査では68.9%)。

30.1%のページに、「メイン」ランドマーク (<main> または role="main") が存在しています (2020年の調査では27.8%)。

17.6%のページに、「検索」ランドマーク (role="search") が存在しています。

「ナビゲーション」ランドマーク (<nav> または role="navigation") が存在するページでは、平均で2.3個のナビゲーションのリージョンがあります。

ARIA

今回の調査では、47,883,732個の ARIA 属性が検出されています。平均して1ページあたり48個の ARIA 属性が存在することになります。対前年比で、25%の増加です。

68.1%のページで、1つ以上の ARIA 属性 (上述のランドマークを除く) が実装されています (2020年の調査では64.6%)。

ARIA が実装されているページは、ARIA がないページと比較して、WAVE でのエラー検出数が平均で41%も多いという結果になっています。2020年の結果 (60%) と比較すると減少していますが、ARIA の実装数とエラー検出数との間には依然として相関関係が見られており、ARIA の不適切な実装がアクセシビリティの阻害につながるケースが多いようです。

1ページあたり平均で、7.6個の aria-label または aria-labelledby が存在しています (2020年の調査では平均5.6個)。なお、aria-labelledby および aria-describedby 属性のうち、15個に1個は、参照 (id 属性を用いた紐付け) が壊れているという結果になっています。

7%のページに role="menu" が存在しますが、そのうち60.1%でマークアップやインタラクションに不備があり (2020年の調査では53.7%)、アクセシブルでない状態になっています 。

あいまいなリンクラベル

22%のページで、あいまいなリンクラベル (「click here」「more」「continue」など) が見られます。なお、これらのページでは、ページあたりの平均で5.9個のあいまいなリンクラベルのインスタンスが検出されています (2020年の調査では平均5.4個)。


前回調査に比べて、改善傾向にあるものとそうでないものがありますが、総じて言うと、ウェブアクセシビリティ改善の余地は、依然として数多く残されているな、という印象です。特に WAI-ARIA の採用が大幅に増える中、その実装が不十分であることによって、かえってアクセシビリティが阻害されている状況が目につくのが、気になるところです。

今回で3回目となる本調査ですが、また次回があれば、引き続きウォッチしてゆきたいと思います。