PC-Talker (無料クリエーター版) を使ってみる
先の記事で、日本における支援技術の利用状況 (2021年4月〜5月実施の JBICT.Net 調査) についてご紹介しましたが、日本ならではの特徴として PC-Talker の利用が突出して多いことを、定量調査の数字を通じて改めて実感しました。
私自身はこれまで PC-Talker を使っていなかったのですが (Windows でのウェブアクセシビリティ検証用スクリーンリーダーとしては専ら NVDA を使っていました)、これだけ高シェアだと、やはり PC-Talker も検証環境に加えたほうがよいだろうと考え、これを機に使ってみることにしました。
「クリエイター版 PC-Talker Neo Plus」の導入
PC-Talker は有料のスクリーンリーダーですが、ウェブ制作者などクリエーター向けに、音声読み上げ機能を省いた無料版の「クリエイター版 PC-Talker Neo Plus」が用意されています。音声出力がない代わりに、音声で出力されるはずの読み上げ内容が、テキスト情報としてオーバーレイのウインドウに表示される、というものです (NVDA の「スピーチビューアー」のような感じです)。
高知システム開発 (PC-Talker の開発元) サイトのベータ版ダウンロードのページで「クリエイター版 PC-Talker Neo Plus」を Windows 10 の PC にダウンロードし、インストールします。
インストールした PC-Talker は、Chrome などのブラウザと一緒に使うことができます。以下、スクリーンショットです。(「Form Design Patterns — シンプルでインクルーシブなフォーム制作実践ガイド」用に作成した日本語版デモで PC-Talker を使ってみた様子です。)
PC-Talker 専用ブラウザ「NetReader Neo」の併用
PC-Talker は Chrome など一般ブラウザと併用することができますが、視覚障害者が PC-Talker と併用するための専用ブラウザとして、NetReader があります。上述の JBICT.Net の調査でも、PC-Talker と併用するブラウザとして NetReader を挙げる人の割合がもっとも高い (6割ほど) という結果が出ており、日本の視覚障害者ユーザーの比較的ポピュラーなウェブ利用環境を再現する意味で、併せてインストールしておくとよいかもしれません。「クリエイター版 PC-Talker Neo Plus」をインストールすると自動的にデスクトップに「NetReader Neo」のインストーラーが表示されるので、それを起動してインストールすることができます。
なお、「NetReader Neo」には「ネオモード (Chromium として動くモード)」と「クラシックモード (IE互換のモード)」の2つのモードがあります。デフォルトでネオモードとして起動するので、特別な事情がなければそのままネオモードとして使用するのがよいでしょう (Chromium なので、WAI-ARIA を用いたインタラクションを備えたウェブページでも、それなりに利用することができます)。
PC-Talker は日本でもっともポピュラーなスクリーンリーダーですが、購入コストがかかるため、NVDA のように気軽に導入しにくいのがネックと言えるかもしれません。それでも、今回ご紹介した「クリエイター版 PC-Talker Neo Plus」であれば、音声読み上げ内容を確認することは (視覚的な形に限定されますが) 十分に可能かと思います。私自身も、今後のウェブアクセシビリティ検証ツールのひとつとして活用してゆきたいと思います。