日本における支援技術の利用状況 (2021年4月〜5月実施の JBICT.Net 調査)
日本国内の視覚障害者の ICT 利用環境向上を目的に活動している日本視覚障害者 ICT ネットワーク (JBICT.Net) が、このたび第1回目となる「支援技術利用状況調査」を実施し、その調査結果の報告書を公開しました。
本調査は、2021年4月から5月にかけて実施されたアンケート調査 (ウェブフォームおよび電子メールで回答を収集) で、視覚障害を持つインターネット利用者が、実際にどのようなデバイス、OS、ブラウザ、メーラーを普段用いていて、それらがどのような支援技術 (スクリーンリーダー、点字ディスプレイ、画面拡大ツール、配色変更) と組み合わされて活用されているかを、定量的にまとめたものです。
類似する調査としては、当サイトでも継続的にウォッチしている WebAIM の「Screen Reader User Survey」が概ね隔年で実施されていますが (最新の調査結果については、当サイトの記事「スクリーンリーダー利用に関するトレンド : 2021年5月~6月実施の WebAIM 調査より」を参照)、日本にスコープを絞った形での定量調査はあまりなく (最近のまとまった数での調査は、総務省が2012年に実施した「障がいのある方々のインターネット等の利用に関する調査研究 (PDF)」にまで遡ると思います)、その意味で本調査は、日本国内向けウェブサイトのアクセシビリティ向上に取り組むにあたっての、ユーザー理解のための貴重な基礎資料と言えるでしょう。
詳細はぜひ、本調査の報告書を精読いただきたいですが、日本ならではの特徴としてはやはり PC-Talker の利用が突出して多いのが印象的でした。これまでも漠然と PC-Talker がメジャーな支援技術であるという認識はありましたが、実際の定量調査の数字として見ることを通じて、改めて PC-Talker のシェアの高さを実感しました。具体的には以下のとおりです。
- パソコン利用者 (有効回答数336名中324名、96.4%) のうち、PC-Talker の利用者は84.9%にのぼる (他のスクリーンリーダーとの併用も含む)。
- Windows パソコンの利用者 (有効回答数336名中310名、92.3%) のうち34.2%がスクリーンリーダーを1種類のみ利用していると回答しているが、そのほとんど (92.5%) が PC-Talker を選択している。
- 主に利用しているスクリーンリーダーを年代別に調べたところ、年代が低くなるほど PC-Talker の割合は低くなる傾向だが、それでも成人ユーザー (20代以上) の各年代において、大半が PC-Talker をプライマリーなスクリーンリーダーと回答している。
この他にも、WebAIM の「Screen Reader User Survey」の結果と見比べてみることで、日本ならではの事情がいろいろと垣間見えて興味深いです。今後も定期的に同調査を継続していただけたら有り難いですし、当サイトでも引き続きウォッチしてゆきたいと思います。