Making Content Usable for People with Cognitive and Learning Disabilities (W3C Working Group Note)

認知および学習に障害を持つ人々にとって使いやすいウェブコンテンツの作りかたについて、W3C が Working Group Note を公開しています。

本ドキュメントは、W3C の Cognitive and Learning Disabilities Accessibility Task Force ("Coga" タスクフォース) によって策定されたものです。認知障害や学習障害は、ウェブアクセシビリティという文脈においては比較的最近になって重視されるようになりましたが (その契機のひとつが、2018年にバージョンアップされた WCAG 2.1 でしょう)、認知や学習に障害がある人々にとっての利用上の障壁を取り除くデザインはまた、いわゆる健常者を含むあらゆる人々にとってのユーザビリティ向上にも、よい影響が期待できます。というのも、ウェブサイトやアプリケーションでよく見られるユーザビリティ問題はつまるところ、ユーザー側の認知や理解の範囲内で構築されるメンタルモデルが、システム側のそれと齟齬を起こしていることに起因することが多いからです。また、利用状況 (コンテキスト) や心理的あるいは身体的な状態によって、一時的に認知、理解、記憶が困難な状況に陥ることは、誰しもあり得ることでしょう。その意味では、いわゆる UX を念頭に置いているすべてのデザイナーにとって、本ドキュメントで提示されている内容は有用であると考えます。

本ドキュメントでは、認知障害や学習障害のユーザーのために考慮に入れるべきポイントとして8つの目標 (Objective) が掲げられており、それぞれの目標に関して「ユーザーストーリー (3章)」と「デザインガイド (4章)」がまとめられています。ユーザーストーリー (†) は、「As a [role], I need [goal/desire], so that [benefit]. ( [ある特定の状況] である私は、[目的や望みごと] がしたい。それによって [こんな利益やよいことが得られる] だから。)」というフォーマットで記述されています。また、デザインガイドは、「User Need (ユーザーのニーズ)」「What to Do (デザインにおいてすべきこと)」「How it Helps (それがユーザーにとってどんな助けになるか)」「More Detailes (さらに詳しい情報)」「Examples (べき / べからずの事例)」というパターンでまとめられています。さらに、5章でテストの方法 (ユーザビリティテストやフォーカスグループなど)、6章でユーザーのペルソナとシナリオが、参考資料として添えられています。

† ユーザーストーリーについては、当サイトでも記事『「ユーザーストーリー」を採り入れてみる』でご紹介しているので、よろしければご参照ください。

この記事では、以下に8つの目標 (Objective) と、各目標に紐づくユーザーストーリーおよびデザインガイドを抜き出します。個々のユーザーストーリーおよびデザインガイドは、原文 (本ドキュメントの該当箇所) へのリンクになっています。日本語のサマリーを添えていますが、詳細は、リンク先の原文をご参照ください。

1. Help users understand what things are and how to use them.

ユーザーの理解 (対象物が何であるか、どう使うか、がわかること) を支援する。

ユーザーストーリー

デザインガイド

2. Help users find what they need.

ユーザーが必要なものを見つけられるようにする。

ユーザーストーリー

デザインガイド

3. Use clear and understandable content (text, images and media).

コンテンツ (テキスト、画像、メディア) を明快にする。

ユーザーストーリー

デザインガイド

4. Help users avoid mistakes (and know how to correct them)

誤りを防ぐ。また、誤りを簡単に修正できるようにする。

ユーザーストーリー

デザインガイド

5. Help users focus.

ユーザーの (コンテンツやタスクへの) 集中を支援する。

ユーザーストーリー

デザインガイド

6. Ensure processes do not rely on memory.

プロセスにおいて、ユーザーの記憶に依存しないようにする。

ユーザーストーリー

デザインガイド

7. Provide help and support.

ヘルプおよびサポートを提供する。

ユーザーストーリー

デザインガイド

8. Support adaptation and personalization.

ユーザーの適応や、その手段としてシステムのパーソナライゼーションをサポートする。

ユーザーストーリー

デザインガイド


以上です。UI デザインをはじめ、デジタルコンテンツ作りに携わる多くの方にはぜひ、本ドキュメントの原文を (機械翻訳を介する形でもよいので) ご一読いただければと思いますが、この記事がそのきっかけになったなら、幸いです。