WCAG 3.0 (W3C Working Draft 2021年12月7日版)
W3C にて策定作業が進んでいる WCAG 3.0 (W3C Accessibility Guidelines) の Working Draft が、2021年12月7日付で更新されました。WCAG 3.0 については以前、First Public Working Draft を記事にしましたが、今回の Working Draft ではその後、どのようなアップデートがなされているのかを、簡単にご紹介したいと思います。
厳密には、今回採り上げる12月7日版の前に6月8日版の Working Draft もあり、以下の内容は、6月8日版でアップデートされている内容もまとめて含んでいます。一部内容の説明文書 (Explainer) への切り出し
First Public Working Draft の時点では存在していた以下の2の章が、新たに用意された説明文書「Explainer for W3C Accessibility Guidelines (WCAG) 3.0」のほうに切り出されています。
- Structure of these guidelines :
ガイドラインの構造。WCAG 3.0 が、「Guidelines」「Outcome」「Methods」という建て付けによって成り立っていることの説明。 - Additional Documentation and Scoring Information :
関連文書およびスコアリングに関する情報。WCAG 2.x でいう解説書 (「Understanding WCAG 2.x」) に相当する文書としての「How To(s)」、ユーザーの障害種別「Functional categories」およびその種別ごとのニーズをまとめた「Functional needs」、新しい適合レベルの考えかた (Gold / Silver / Blonze)、の説明。
この切り出しを受けて、WCAG 3.0 の章立ては以下のようになっています。
- Introduction :
イントロダクション - Normative requirements :
規範的な内容 (normative) および非規範的な参考情報 (informative) についての説明。 - Guidelines :
各「Guideline」およびその「Outcome」と「Methods」、関連する障害の種別 (Functional categories)、重大な誤り (Critical errors)、段階的な評価 (Very Poor [0]、Poor [1]、Fair [2]、Good [3]、Excellent [4]) の説明。 - Testing :
WCAG 3.0 の適合テスト方法である「Atomic tests」(WCAG 2.x におけるテスト方法と同様の、コードやオブジェクトなどに対するテスト) および「Holistic tests」(ユーザビリティテスト、支援技術を用いたウォークスルー、など) の説明。 - Scoring :
「Atomic tests」による評価や、各 Guideline の「Outcome」の段階的な評価のしかた、「Functional categories」を加味した「Overall score」の算出、さらには「Holistic tests」の評価のしかた、についての説明。 - Conformance :
WCAG 3.0 の適合レベルである Gold / Silver / Blonze の説明、適合のための要件や条件、適合宣言などについての説明。 - Glossary :
用語集
なお、切り出された「Explainer for W3C Accessibility Guidelines (WCAG) 3.0」の内容は大雑把に言うと、以前、当サイトの記事「WCAG 3.0 First Public Working Draft」でサマリーしたような、WCAG 3.0 の位置づけ、建て付け、適合レベル、テスト、に関する概要説明がひととおり含まれています。ざっと一読した感じでは、現時点では特に目新しい情報はなさそうですが、今後 WCAG 3.0 が練られてゆくにつれて、この説明文書も随時アップデートされてゆくと思いますので、折を見て参照するとよいと思います。
「Guidelines」における内容追加
今回の WCAG 3.0 Working Draft では、3章の「Guidelines」に、新たな項目として「3.6 Error Prevention」というセクションが追加されています。これによって、WCAG 3.0 の「3. Guidelines」は、以下の構成になっています。
- 3.1 Text alternatives
(テキストによる代替) - 3.2 Clear words
(明快な言葉) - 3.3 Captions
(キャプション) - 3.4 Structured content
(構造化されたコンテンツ) - 3.5 Visual contrast of text
(テキストの視覚的なコントラスト) - 3.6 Error Prevention
(エラーの回避)
「Conformance」における内容追加
今回の WCAG 3.0 Working Draft では、6章の 「Conformance」に、新たな項目として「6.2 User Generated Content」が追加されています。ソーシャルメディアへの投稿や動画共有サイトにアップロードされたコンテンツを自サイトに埋め込むなどのケースを想定し、そのアクセシビリティをどう担保し、評価するか、がまとめられる予定です。これによって、WCAG 3.0 の「6. Conformance」は、以下の構成になっています。
- 6.1 Conformance levels
(適合レベル : Gold / Silver / Bronze) - 6.2 User generated content
(ユーザー生成コンテンツ) - 6.3 Conforming alternative version
(適合している代替版) - 6.4 Only accessibility-supported ways of using technologies
(アクセシビリティ サポーテッドな技術の使用でのみ適合) - 6.5 Defining conformance scope
(適合範囲の定義) - 6.6 Conformance requirements
(適合要件) - 6.7 Conformance claims
(適合宣言)
以上です。WCAG 3.0 はまだ内容的に煮詰まっていないところが多く、今後もいろいろと変更が加えられてゆくと思います。引き続き、動向をウォッチしつつ、当サイトでも情報をアップデートしてゆきたいと思います。