書籍「Accessibility For Everyone」がウェブで無料公開

2017年に A Book Apart から出版されていた書籍「Accessibility For Everyone」が、このたびウェブで無料公開されました。

著者の Laura Kalbag さんによると、本書が出版されてから9年が経ち、いつか第2版を作ることも考えているが、まずはいったんこの本を無料で公開し、そのナレッジを広くウェブコミュニティに還元したい、ということのようです。

さすがに9年前の書籍ということで、一部の記述に古さがあることは否めませんが (たとえば、WCAG のバージョンが 2.0 であったり、ブラウザの例として Internet Explorer が挙げられていたり、など)、アクセシビリティ向上のためにやるべきことの本質は基本的に変わっておらず、その意味で本書の内容は今でも十分に通用するものと思います。

本書の概要

以下、ご参考として、本書の章立てと各章の概要をご紹介します。

1. Considering Accessibility

アクセシビリティとは何か?について、よりインクルーシブに「ユニバーサルデザイン」に立脚することを説いています。また、利用者に対する共感の重要性、支援技術を介したウェブ利用の概要がまとめられています。

2. Disabilities and Impairments

この章ではまず障害に対する理解のありかたとして、「障害者」ではなく「障害のある」という視点を提供しています (障害の「社会モデル」に近い捉えかたと言えます)。そのうえで、各種の障害の概略 (視覚、聴覚、運動、認知、前庭障害) を説明し、加えて環境要因として多様な利用コンテキストもアクセシビリティのスコープに含まれることを示しています。

3. Planning for Accessibility

アクセシビリティを推進するための戦略的、組織的なアプローチについて述べています。組織づくり、プロジェクトにおけるアクセシビリティのスコープ設定、リサーチ (ユーザー理解)、開発、リリース後のアクセシビリティの維持、といったプロセスの各段階において、アクセシビリティに関する決定を適切に下すことを説いています。

4. Content and Design

アクセシブルなコンテンツとデザインについての説明です。アフォーダンスや慣習に立脚し、ナビゲーション (導線) 設計、ライティング、タイポグラフィ、インタラクション設計、配色、リッチメディア (非テキストコンテンツ情報保障)、といった各論を掘り下げています。

5. Accessibility and HTML

アクセシビリティの土台として、適切に構造化された HTML の重要性を説いています。セマンティックに構造化されたコンテンツは、情報のファインダビリティに寄与し、フォームを利用可能にし、キーボード操作を可能にします。構造とスタイルの分離 (CSS)、プログレッシブエンハンスメント、WAI-ARIA についても触れています。

6. Evaluating and Testing

アクセシビリティの評価、テストについての説明です。WCAG のようなヒューリスティクスを用いたレビュー、実際のユーザーエージェント (デバイス、ブラウザ、支援技術の組合せ) を用いたテスト、ツール (バリデーター、WebAIM WAVE、コントラストチェッカーなど) を用いた検証、キーボードを用いてのウォークスルー、実際のユーザー行動を観察するユーザビリティテスト、といった手法が紹介されています。

7. Laws and Guidelines

アクセシビリティに関する法律およびガイドラインについてまとめています。法律としては、米国の Section 508 (リハビリテーション法508条) や欧州の European Accessibility Act (EAA : 欧州アクセシビリティ法) が紹介され、ガイドラインとしては W3C の WCAG (Web Content Accessibility Guidelines) や ATAG (Authoring Tool Accessibility Guidelines) が紹介されています。そのうえで結びとして、「ガイドラインを超える」こと (チェックリスト的なアプローチで満足するのではなくユーザー体験にフォーカスすること)、テクノロジーの進化 (新しい支援技術の動向、ユーザーエージェントのアクセシビリティサポート状況、フロントエンド技術の進化など) にキャッチアップし続けること、正しいことをすること (Do the right thing)、を説いています。


ウェブコンテンツとして公開されているので、ブラウザで機械翻訳して日本語で読むことも手軽にできます。ウェブアクセシビリティに取り組むにあたって、おさえておくべきことを俯瞰したい方や、エッセンスを網羅的に学びたい方にとっては、とても参考になると思います。文章量もさほど多くないので、ご興味ある方はこの機会に読んでみてはいかがでしょうか。