Ronald Mace のユニバーサルデザイン7原則
このところ、Web以外での、リアルワールドにおけるプロダクトのユニバーサルデザイン(UD)関係者とお話をさせていただくことが何度かあり、その中で、久々に「Ronald Mace(ロナルド メイス)のユニバーサルデザイン7原則」に触れる機会がありました。古くからある有名な原則なので、すでにご存知の方も多いと思いますが、今見ても興味深い内容なので、この場でも採り上げてみたいと思います。
当サイトでは度々、WebサイトやWebアプリケーションのアクセシビリティについて扱っていますが、Mace の7原則は、こういったソフトウェアベースのものにとどまらず、ハードウェア的なもの、さらにはもっと大きな施設(たとえば建築物)なども包含した上で、ユニバーサルデザインのありかたについて、簡潔に述べたものと言えます。
Rolald Mace 氏は、アメリカの建築家で、ノースカロライナ州立大学ユニバーサルデザインセンターの所長を務めた経歴を持っています。幼少の頃にポリオを患い、酸素吸入をしながら電動車いすを使った生活をしていたという自らの障害体験もあり、1985年に、ユニバーサルデザイン7原則を発表しています。下記が、その内容になります(詳しい原文は、ノースカロライナ州立大学ユニバーサルデザインセンターのサイトの「Universal Design Principles」でご覧いただけます)。
- Equitable Use (誰でも公平に使えること)
- Flexibility in Use (使う上での自由度が高いこと)
- Simple and Intuitive (使いかたが簡単で、直感的に理解できること)
- Perceptible Information (必要な情報がすぐに見つかること)
- Tolerance for Error (うっかりミスや危険につながらないこと)
- Low Physical Effort (身体への負担が軽く、楽に使えること)
- Size and Space for Approach and Use (接近したり利用するために十分な大きさと広さが確保されていること)
上記いずれも、なるほど、と思うものばかりですね。WebサイトやWebアプリケーションを構築する上でも、ぜひ、気に留めておきたい考えかたです。これらの原則をWebという側面から考えると:
- コンテンツのデザイン(ビジュアルデザインに限らず、情報デザインも含む)で解決できること
- ブラウザのユーザーインターフェース(UI)で解決できること
- 支援技術で解決できること
- ハードウェア(閲覧端末)側で解決できること
...など、色々あると思います。場合によっては、本来は支援技術やブラウザなどで解決すべきところ、現実的に対応できていないのでコンテンツ側でカバーする、などといった暫定的なソリューションもあるかもしれません。アクセシビリティ・サポーテッドの考えかたも踏まえつつ、お互いが折り合いながら、少しでも実現可能なレベルで、Webのユニバーサルデザインが進めばいいなと思います。
ところで、この原則を見ると、アクセシビリティに限定しているわけではなく、むしろ、ユーザビリティの領域に含まれそうな内容もあります。もちろん、アクセシビリティとユーザビリティの領域には明確な境界はありませんし、そういう境界を決めること自体、少なくとも実務レベルではナンセンスだと思いますが(当サイトが「Website Usability Info」という名称でありながら、ユーザビリティについてもアクセシビリティについても同等に扱っているのはこのためです)、この7原則は、「ユニバーサルデザイン」イコール「アクセシビリティ」と限定的に考えてしまうことに対する注意喚起と解釈することもできそうです(自戒を込めて)。
いずれにしても、とても平易な言葉で表現された、汎用性の高い原則だと言えるので、WebサイトやWebアプリケーションの開発に携わる人も、「それはリアルワールドの話でしょ」と敬遠することなく、一度噛み締めてみることをおすすめしたいと思います。