Out of sight, out of mind.
「Out of sight, out of mind.」という英語の諺があります。元々は「去る者は日々に疎し」という意味だと思いますが、英語圏でのウェブユーザビリティ関連の議論では、「目に入らないものは、意識されない」「存在が認知されないものは、使ってもらえない」といった意味で引き合いに出されることがあります。ユーザーインターフェース (UI) 設計の勘所を端的に言い表わしていて、とても面白い表現だと思います。
これまで様々なウェブサイトの UI を評価したり、実際にユーザビリティテストをしたりしてきましたが、たとえば以下のようなものは「out of sight」に陥ってしまうことが多いような気がします。
- ユーザーに馴染みのないアイコン
- ユーザーの意識にフィットしないラベリング (ラベル自体が存在せずユーザーにまったく伝わらないものも含む)
- 特殊なジェスチャ操作 (しかもその操作の手がかりが提示されていないもの)
- 存在感の薄い UI 部品 (デザインが「フラット」すぎたり、カラーコントラストが低かったりするもの)
- 折り畳まれて隠された機能や情報 (敢えてユーザー自らが展開操作しなければ見られないもの)
- ...などなど
サイトをデザインする側にしてみれば自明なものでも、ユーザーには (デザイナーの意図どおりに) 認知/理解されないことがあります。また、十分に見えるものでも、文脈に合っていないがためにユーザーに見過ごされてしまうことがあります。さらには、同じ UI 要素であっても、ユーザーの閲覧デバイス (画面サイズ) によって「out of sight」への陥りやすさが相対的に異なってくることもあります。
こうしたサイト側とユーザー側との間に生じる「認知ギャップ」は、ユーザビリティテストをやってみると、しょっちゅう目の当たりにします。UI を設計するにあたっては、「その機能や情報はちゃんとユーザーの目に入って、使ってもらえるだろうか」という意味で、「Out of sight, out of mind」という言葉を繰り返し何度でも、意識したいものです。