ウェブアクセシビリティの法的な義務化について考える
ウェブアクセシビリティと法律については、私なりに思うところがあって、以前、こんなツイートをしたことがあります。
日本でも、いっそカナダ(オンタリオ州)のように、(公的機関のみならず)民間のサイトに対してもアクセシビリティの担保が法制面から求められるようになればいいと思う。「法で規定されている」ことの説得力は絶大。実際、いろいろ「進む」と思う。
— caztcha (@caztcha) 2014, 7月 9
実際、あるグローバル規模のサイトリニューアルのプロジェクトに携わる機会があって、それまで組織としてウェブアクセシビリティの意識が根付いていなかったところ、カナダのオンタリオ州の法規制 (参考 : Make your website accessible | Ministry of Economic Development, Employment and Infrastructure ) によって、アクセシビリティを担保しなければならないという合意形成ができた経験があるからです。
ちなみに世界には、ウェブアクセシビリティに関する法律がいくつかあります (参考 : 世界各国における法律によるWebアクセシビリティの義務化 - NAVER まとめ)。日本では「障害者差別解消法」が制定されていますが、2016年の本格施行を前に、JIS X 8341-3:2010 を障害者差別解消法の合理的配慮ガイドラインのひとつとすべきという議論が出てきています。
「障害者差別解消法」については、その基本方針について、ちょうど内閣府でパブリックコメントを募集していましたので (障害者差別解消法に基づく基本方針(原案)に関する意見募集について)、私も投稿させていただきました。ウェブアクセシビリティの法規制については、いろいろな意見を耳にします。たとえば、以下のようなものです。
- 法的な義務化によって、「違法になるから、しかたなくやらなきゃ…」という歪んだマインドセットに陥ってしまうのではないか。
- 法的に義務化したとして、実際問題、既存のサイトをアクセシブルに作り替えるためのリソースはどうするか。
マインドセットについては、いささか乱暴かもしれませんが、それはそれでよいのではないでしょうか (作り手が好むと好まざるとにかかわらず、あらゆるウェブサイトはアクセシブルであるべき、という意味で)。リソースについては難しいところですが、現実的に可能な範囲での段階的改善を許容し、後押しする (組織の合意形成を促し進めやすくする) のが法の役目だろうと思います。
世の中には、PL、食品安全、建築基準、などなど、モノづくりのあるところ、大抵は (ユーザーを守るための) 品質基準の法律があります。ウェブがこれだけ生活に根付いた基本インフラとなった現在、アクセシビリティをウェブにおける「当たり前」な「品質基準」とするならば、ウェブアクセシビリティに関する法規制は (必ずしも障害者差別という文脈でなくてもよいかもしれませんが) あって当然なのではないかな、と考えています。