Abby Covert "How to Make Sense of Any Mess" (UX Days Tokyo 2016)
- 公開日 : 2016年3月27日 (2018年1月18日 更新)
- カテゴリー : 情報設計 (IA), ユーザーエクスペリエンス (UX)
2016年3月18日に開催された UX Days Tokyo 2016 カンファレンス で、Abby Covert さんによる講演がありました。
Abby Covert さんは、書籍「How to Make Sense of Any Mess: Information Architecture for Everybody」(日本語訳は「今日からはじめる情報設計 – センスメイキングするための7ステップ」) の著者として有名なインフォメーションアーキテクトです。今回初めてご本人をお見かけして (それまではモノクロのプロフィール画像から精悍なイメージを強く持っていましたが)、意外と小柄で、でも向日葵のようにエネルギーに満ち溢れたチャーミングな方だなと感じました。


以下、講演のノートです。
講演者のスライドと発話を筆者がメモしたものをベースに、当記事用に (筆者なりの理解や解釈を加味する形で) 若干編集を加えております。そのため、講演内容を正確に再現しているものではないこと、ご承知おきください。イントロダクション
- 混沌とした状況 (messes) を、どう理解させる (make sense) か。
- 日々の暮らしの中で、混沌は様々なところで見られ、その複雑さは増すばかり。それら混沌の中には、見えない (表面化していない) ものもある。
- 情報 (information) を物質として (as material) 捉えるだけでは不十分。物理的な物質が無い状況 (lack of physical material) から (人間による類推や主観によって) 情報が産み出され得ることもある。
- 情報 (information) とコンテンツ (content) はイコールではない。あるコンテンツにあるコンテキストで接したとき、自分が得る (解釈する) 情報と他者が得る (解釈する) 情報は、人それぞれである。
- 情報アーキテクチャとは、多くの人が得る (解釈する) 情報が同じになるように、様々なデータ (ファクト) を適切にアレンジしてコンテンツを形成する手法である。(Abby のスライドでは「Information architecture is how we arrange the parts to be understandable as a whole.」と書いてありましたが、筆者はこのように理解しました。)
混沌を理解させるための3つのレッスン
1. Language Matters (言語は重要)
- 同じことを指し示すのに、組織や人によって、違う表現が用いられることがある。(ひとつのことを指し示すのに、人によって違う名詞が用いられたり、それらの名詞に対して違う動詞が用いられたり。)
- 共通理解のためには、ラベルを変えるのか、あるいは (概念) モデルを変えるのがよいか、適切に考える必要がある。
- 大事なのは、何かを表現したときに、その意味が、みんなで共通で理解できること。
- 統制語彙 (controlled vocabularies)
- 平易な言葉 (plain language)
- 組織内における言語をシンプルにする。(Simplify the language used in your organization.)
- (「意味」をないがしろにする悪い) ドラゴンを退治せよ。(Slay the semantic dragons in your organization.)
2. There Is No Right Way (正解は無い)
- 多くの場合、タクソノミー (分類) とは、レトリック (腹落ちさせるための修辞) であって、科学的に正しくある必要はない。
- トマトは科学的には「果物」だが一般的には「野菜」と理解されている。科学的な正しさに拘ってトマトが生鮮食料品店で果物売場に置かれた場合、買い物客にとってファインダビリティが損なわれる。
- もっとも、学校の理科の授業では、トマトは「果物」に分類されるだろう。つまり、ユーザーの目的に応じてタクソノミーは変わり得る。普遍的な解があるわけではない。
- 組織の論理に基づいたタクソノミーに注意。組織の中の人も交えて一緒に、ユーザー中心のタクソノミーを作ってみて、組織中心のタクソノミーと比較検討してみる。その際、カードソーティングが強力なツールとなる。
- 情報の体系化、構造化、組織化にあたっては、従来とは違うやりかたを示してみる。(Show an alternative way of organizing something.)
3. We Need Pictures (図解が必要)
- 解決しなければならない問題を図解することで、スムーズに事が運ぶことが多い。
- 図解によって、的確な共通認識ができたり、コンテキストのすり合わせができたりする。
- 情報を (人の頭の中から取り出して)「見える化」する。
- 情報を集め (collect)、繰り返し整理する (iterate) ことに時間とスペースを割く。
- 説明しにくいことを視覚化する。
- 複雑さを受け入れ、解決すべきことの複雑さがわかるようにする。単純化に腐心するのではなく。
- (表層的な) 結果だけでなく、背景にあるプロセスも理解できるようにする。
- 合意によって、勢いが生まれる。(With agreement comes momentum.)
- みんなの頭の中にあるモンスター (とらえどころのないもの) を絵にしてみる。(Make a picture of the monster in everyone’s head.)
最後に
- IA is not just for information architects. IA is practiced by everybody. (情報アーキテクチャは、インフォメーションアーキテクトという職種のためだけのものではない。情報アーキテクチャは、みんなが取り組むものである。)