Chris Nossel "Narrow AI in Sci-Fi" (UX Days Tokyo 2016)
2016年3月18日に開催された UX Days Tokyo 2016 カンファレンス で、Chris Nossel さんによる講演がありました。
Chris Nossel さんは、Cooper 社の UX デザイナー兼トレーナーです。「Make It So: Interaction Design Lessons from Science Fiction」(日本語訳は「SF映画で学ぶインタフェースデザイン - アイデアと想像力を鍛え上げるための141のレッスン」) の著者でもあります。
以下、講演のノートです。
講演者のスライドと発話を筆者がメモしたものをベースに、当記事用に (筆者なりの理解や解釈を加味する形で) 若干編集を加えております。そのため、講演内容を正確に再現しているものではないこと、ご承知おきください。1/5 What is Narrow? (Narrow とは?)
- AI (artificial intelligence : 人口知能) には3つのカテゴリーがある。Super AI、General AI、そしてNarrow AI。
- General AI (汎用的なAI) とは、人間のごとくコミュニケーションできるAI。まだ実現していない。
- General AI がもし実現したら、AI 自らが、より優れた AI を作ることになろう。その繰り返しによって Super AI が作られるだろう。人間が恐れるのは、この General AI から Super AI にかけての singularity である。
- 一方、Narrow AI とは、あくまでも 1つのドメイン (領域) で、perceiving (認知)、parsing (解析)、decision making (判断)、adapting (適応)、action taking (行動)、learning (学習) ができるものである。
Narrow AI の例
- チェスなどのゲーム。話題の Alpha Go。ディープラーニングによって強力になるが、あくまでも「碁」という限られたドメインにおける能力なので、Narrow AI と言える。
- Google Translate
- Spotify (お気に入りの曲を分析して、ユーザーが気に入るであろう音楽を提案してストリーミング再生する。)
2/5 Narrow AI is Hard to See (Narrow AI は見えにくい)
- 1940年代に (テレビの中で) 描かれた AI。トースター (適度に焼けたらパンが飛び出る) や電気ケトル (空焚きしたらプラグが自動的に外れる)。今では当たり前。
- 「機能」が認識されるようになれば、それはもはや AI ではない。
- SF 映画に出てくる様々なテクノロジー。よくよく目を凝らしてみると、様々な Narrow AI が組み合わさって、便利さを提供していることがわかる。でもさりげなさすぎて、気づきにくい。
3/5 Narrow AI is Hard to Write (Narrow AI は描きにくい)
- Narrow AI の設計は難しい。SF 映画でも、しばしば失敗している (突っ込みどころがある)。
- 宇宙船の航路変更システム。乗組員Aさんが設定していた航路を、乗組員Bさんが変更したことについて、AさんがBさんを問い詰める。そこでBさんが、航路変更の前後でどちらが適切な航路かを確認する操作 (照会) をする。でも本当に技術が進化すれば、事後に照会して初めて確認するのではなく、航路変更操作時に瞬時にフィードバックがなされる (その時点で不適切ならやり直せる) べきだろう。
- 宇宙船の攻撃システム。人が手動で照準を合わせる。これはヒーローがヒーローとしてあるための演出。本当に技術が進化すれば、照準は自動で合うはずだが、それだと冷徹すぎてヒーローっぽくない。
- 映画「War Game」で、○/×ゲーム (三目並べ) を覚えたコンピューターが、全面核戦争のシミュレーションをするシーン (東西どちらが先に攻撃しても引き分け。世界は破滅する。勝つためには「戦わないこと」という結論を出す)。一見、自然なストーリー展開だが、○/×ゲームのロジックのみを転用 (一般化) して結論を導き出している (実際の世界はもっと複雑なはず)。
4/5 Narrow is the AI of Now (Narrow AI こそが、現時点でのAI)
- Narrow AI には Assistive なものと Agentive なものがある。
- Assistive : ユーザーを支援するAI。ホテルのコンシェルジェロボット。Siri などのパーソナルアシスタント。
- Agentive : ユーザーの代理で仕事をするAI。ルンバ。Narrative カメラ (外出中に自動撮影、帰宅すると Wi-Fi に自動接続し、写真の整理ができる)。自動運転カー。
5/5 A Conversational Model (対話型モデル)
- 優れた AI を実現するためには、ユーザーのメンタルモデルに自然に合致していることが重要。
- 本質的な問いかけ (ユーザーとの対話) を通じて、コンセプトを導き出す。
- If you could hire for your users an assistant that was very fast and infinitely knowledgeable,
- how would they have it help them do their work?
- how would they have it do on their behalf?