地図は Google マップだけで大丈夫?
地図の提示に Google マップを活用するウェブサイトは多いですが、その一方、 ユーザビリティの観点で 「ウェブサイトにおける地図の提示は Google マップだけで大丈夫なのか?」という議論を聞いたことがある方も少なくないでしょう。
古くからある議論 (ウェブ利用の手段が PC のみだった頃から言われていること) ではありますが、 モバイルデバイスでのウェブ利用が当たり前となった現在、改めてこの議論について考えてみたいと思います。
Google マップの利点
Google マップには、以下のような利点があります。
- ウェブサイトの運営側 (またはウェブ制作者) から見た場合、Google マップを活用することで地図制作コストを抑えることができる。
- 多くのウェブ利用者にとって、Google マップはおなじみのアプリケーションである。
- 特にモバイルデバイス用のネイティブアプリにおいて、コンテキスト (利用状況) に応じてユーザーが好きに地図を扱える。任意のズームはもちろんのこと、GPS によって現在地からの経路探索をしたり、土地勘がない (東西南北がわからない) 場所で「ノースアップ」の代わりに「ヘッドアップ」表示にしたり、など。
特に3つめのメリットは近年とても大きく、多くのウェブ利用者がスマートフォンを持つようになった現在、Google マップで十分事足りるケースは多くなっています。ウェブページに Google マップを埋め込むという実装はユーザビリティの問題がありますが (参照 : Google マップの埋め込みについて考える)、インタラクティブな地図操作を Google マップのサイト (モバイルデバイスであれば Google マップのネイティブアプリ) 側に委ねることで、多くの場合、実用上問題ない UX をもたらしていると言えます。
Google マップで足りないところ
その一方で、Google マップには足りないところもあります。Google 側でさらなるデータの蓄積がなされたり (実際、大都市圏については少しずつ整備が進んでいるようです)、アプリの UI が改善される (ストリートビューとのシームレスな連携を含む) ことによって、いずれ解決するかもしれませんが、現時点では以下の点が挙げられます。
- 最寄駅においてどの改札口や出口から出たらよいか、がわからない。
- 目的地に着いたところで、その建物や敷地の入口がどこか、がわからない。
- 経路として建物の中を通る必要がある場合、フロア (階) やエレベーター/エスカレーター情報まではわからない。
- 歩行者の目線で識別しやすいランドマーク (たとえば、ユニークな看板や、特徴的な建物の外観など) が、マップ上では提示されない。
また、スマートフォンやタブレットを利用しない人も一定数いて (平成28年度 情報通信白書の「主な ICT 端末 (スマートフォン、タブレット等) の利用率」によると、日本では、世代による比率のバラツキはあるものの、スマートフォンの利用率は6割、タブレットの利用率は2割に対して、フィーチャーフォンの利用率が4割にのぼります)、こうしたユーザーは外出先で Google マップを利用できない可能性があります。
交通アクセス情報をオリジナルで提供する
多くのケースでは Google マップで事足りる (そして今後ますます、Google マップで十分なケースは増えてゆく) と言えますが、ユーザーに案内したい場所が下記に当てはまる場合は、交通アクセス情報をオリジナルで提供するとよいでしょう。
- 最寄り駅が大きな駅である (複数の改札口や出口がある)。
- 入口を案内するのに補足説明が必要である。
- 大きな建物の中にある。
- 経路を説明するのに好都合な、目につきやすい特徴的なランドマークがある。
- モバイルアプリを利用しない人 (たとえばシニアのユーザーなど) が大半である。
なお、ウェブページでオリジナルの交通アクセス情報を提示する際には、以下に気をつけるようにします。
- ユーザーの行動シナリオやコンテキスト (利用状況) に合った形で、ページに情報 (地図、テキスト、ランドマークを示す画像など) を配置する。
- 地図は独自に作っても、Google マップの地図を流用してもよい。
- ただし Google マップの地図を用いる場合は Google の使用許諾に注意する。
- その場所を初めて訪れるユーザーでも容易に理解できることを確認する。
- 地域でおなじみのランドマークであっても、初めて訪れる人には目につきにくいことがある。
- 土地勘のないユーザーは東西南北がわからなかったり、その土地で常識とされている知識 (たとえば通りの通称など) が無かったりする。
- 情報が古くなっていないか、絶えず確認する。
- ランドマークとして機能していたユニークな看板が、いつの間にか差し替わっていたり、など。
- 外出先のスマートフォンでも使いやすくする。(オリジナルの交通アクセス情報が簡潔にまとまっていれば、Google マップのネイティブアプリを駆使するよりも楽なので。)
- スマートフォンでの閲覧を前提としてレイアウトする。
- 十分な文字サイズにする。
- ピンチ&ズームを可能にする。ズームした際に画像がジャギーになって肝心な視覚情報が得られない...ということも少なくないので注意する。
交通アクセス情報をオリジナルで提示するのは、公開後の運用も含めて手間がかかりますが、ここを丁寧にすることで、より優れたユーザーエクスペリエンス (UX) をもたらすことが期待できると思います。