融けるデザイン
「融けるデザイン — ハード×ソフト×ネット時代の新たな設計論」を読みました。
情報技術の発展に伴い、ハードウェア、ソフトウェア、そしてインターネットがますます融け合い、それによって新しい世界の姿が現れつつある中、ユーザーインターフェースやインタラクションのデザインはどうあるべきかを説く本です。ユーザーの知覚や行為に焦点を当て、「自己帰属感」というキーワードを軸に、使いやすい / 心地よいインターフェースとはどういうものなのかを語っています。
この記事では、本書を読んで得た学びや感じたことを 、メモとして (引用というよりは私自身の解釈が混じった形ですが) 箇条書きにまとめます。
- コンピュータは何にでも見立てることができる「メタメディア」。万能性 / 自由度が高いがゆえに積極的な「デザイン」が必要。
- メタファの限界。メタファは道具のわかりやすさに寄与するが、道具のありかたにとって制約にもなる。昨今は脱メタファなサービスが増えている。
- ハイデガーの「事物的存在」と「道具的存在」。モノを使っていて何か問題が起きると、そのモノ自体がユーザーの意識の対象になってしまう (「事物的存在」になる)。一方、モノを使っていて問題が起きなければ、それ自体は透明な存在になり、意識に上がることなくタスクに集中できる (「道具的存在」になる)。
- 透明な UI。モノが「道具的存在」となり、モノの持つインターフェースに対する意識が薄れることで、インターフェースを介して扱いたいオブジェクトに意識を集中できる。
- 自己帰属感。道具が「道具的存在」となり、その UI が透明化することで、道具がユーザーの自己の中に帰属する感覚。ユーザー自己の能力が拡張され、自然な感覚でタスクをコントロールできる。
- 「サクサク」と「ヌルヌル」。「サクサク」は、取って付けたアニメーションで実現できるものではない。自己帰属感を高めるべくユーザーの身体の動きに追従していることが不可欠。「ヌルヌル」は、自己帰属感が担保されたうえでの、さらに自然な感覚。慣性の表現など。
- ギブソンの「知覚行為循環」。行為により知覚がなされ、また知覚が行為に影響を与える。(ノーマンの「行為の7段階モデル」にもつながりそう。)
- 人間の視覚は2D (二次元) である。2D+動きによって、輪郭を認識したり、物事を3Dとして知覚することができる。動きの中で不変性を見い出し、それを物体として認識する。ギブソンはこれを「不変項」と呼び、アフォーダンスにつながる。
- 物事の知覚には動き、つまり時間軸が伴う。よって物を「モノ」ではなく「持続」として捉えてみる。
- IoT は人に対して、行為により生成される暗黙知を形式知に変換し、蓄積し、出力し、人の行為にフィードバックを与える。
- デザインにおいては、人間の暗黙的行動を明示的に扱うことが重要。
- ユーザーを拘束しない設計。いつでもどこでも使えること、いつでもどこでもやめられる (再開できる) ことが大事。
- ユーザーの生活全体を視野に入れて考える。デザイン成果物 (プロダクトなど) が実利用されているときだけでなく。
- ひとつのメディア (The Internet)、マルチなインターフェース。