ブラウズか検索か
ウェブサイトにおける情報探索の方法には、大きく分けて、ブラウズと検索があります。ブラウズとは、用意されたナビゲーションを辿ってゆくことで目的の情報に到達するもの、検索とは、ユーザーが自由にクエリ (キーワードやその組み合わせなど) を入力することで目的の情報を探し出すものです。それぞれ、以下の利点があります。
- ブラウズの利点
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- ユーザーは、目的の情報を何と表現するかを記憶していなくても、情報探索ができる。情報の匂い (information scent) が適度にあるメニューを、順次辿ればよい。
- クエリを入力するよりも、ナビゲーションをクリックやタップで進むほうが楽である (特にスマートフォンにおいて、小さなオンスクリーンのキーパッドでタイプ入力するのは面倒)。
- 検索の利点
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- ナビゲーションのステップを順に追う必要がなく、ショートカットで目的の情報に辿り着ける。
- ユーザー自らの語彙を用いて、情報探索に取り掛かりやすい。
どちらを利用するかはユーザー次第ではあるのですが、最近、Baymard Institute (欧米を中心に大規模な UX リサーチを実施している会社) による興味深い記事を読みました。
大規模な EC サイトではサイト内検索が有用なツールとして機能しているのに対して、商品カタログが比較的小規模な直販サイト (Direct-to-consumer site) では、ユーザー行動としてまず100%、サイト内検索は利用されず、ブラウズが行われる、というものです。
若干のユーザー (Baymard の調査サンプルの15%) で、サイト内検索を利用するケースが見られたものの、それらはいずれも、ブラウズの結果が思わしくない場合に次善策として採られた行動だそうです。Amazon のような総合 EC サイト (あるいはアプリ) を利用する機会が圧倒的に多い昨今、検索を介して情報を探すのが当然という認識でいると、ここまで振り切れたリサーチ結果は驚きかもしれませんが、私自身のユーザー体験やこれまでのユーザビリティテスト経験も踏まえてみるとなるほどと思うところもあり、以下のように考察することができるのかな、という感じがします。
- 情報探索にあたって、ユーザーは基本的に、手軽なナビゲーション操作 (クリックやタップ) で完結できるブラウズを好む。
- カテゴリー分類が比較的浅く、情報規模が膨大でない限りは、プライマリーな情報探索手段としてブラウズを選択し続ける。
- カテゴリー分類の深さや情報規模が、ある大きさを超えると、(無意識的に) ブラウズを面倒と感じ、プライマリーな情報探索手段として検索を選択する。
プライマリーな情報探索手段の選択が切り替わる「閾値」は、ユーザーやサイトが扱う情報の種類によって様々かもしれませんが、ユーザー行動の基本的な嗜好として、まずはブラウズが検索に優先すると考えるならば、ナビゲーション設計 (カテゴリー分類、ラベリング、メニュー構造、レイアウト、など...) を丁寧に練り上げてゆくことは、とにもかくにも肝要だと言えるでしょう。
もちろんサイト規模が大きくなれば、相対的に検索体験が重視されるかもしれません。ただ実際には、ユーザーの情報探索が検索だけで完結するとは限らないことを併せて考えると (たとえば、検索を経て着地したページから、そこにあるローカルナビゲーションや関連リンクを用いて進む先を「微修正」しつつ、最終的な目的の情報に辿り着くことは少なくないと思います)、ナビゲーション設計の重要度は、ブラウズが情報探索手段としてプライマリーなのかセカンダリーなのかを問わず、変わらないでしょう。