英国内務省 (UK Home Office) によるウェブアクセシビリティの「べき/べからず」ポスター
英国政府 (GOV.UK) は、世界的に見てもっとも積極的にアクセシビリティに取り組んでいる中央政府のひとつという印象ですが (たとえば、「Make your public sector website or app accessible」というガイダンスを提供していたり、「Accessibility in government」というブログを展開していたりします)、先日 UK Home Office (英国内務省) が、ウェブアクセシビリティの「べき/べからず (Dos/Don'ts)」をまとめた啓発ポスターを制作していることを知りました。GitHub で公開されているので、ご紹介したいと思います。

障害の種類 (以下の7種類) ごとに、Dos (べき) と Don'ts (べからず) がまとめられています。
- 自閉症スペクトラム (autistic spectrum)
- スクリーンリーダー利用 (screen readers)
- ロービジョン (low vision)
- ディスレクシア (dyslexia)
- 運動障害 (physical or motor disabilities)
- 聴覚障害 (deaf or hard of hearing)
- 不安状態 (anxiety)
興味深いのは、これまであまりウェブアクセシビリティの文脈で深く掘り下げられることがなかった、自閉症スペクトラム、ディスレクシア、不安状態 (†) についても触れられていることです。これらは「認知/学習障害」と括られることが多いですが、障害というと身体的な障害に注目が集まりやすい中、より内面的な問題 (メンタルや脳機能の障害) も含めてバランスよく対峙しようという姿勢の現れでしょうか、政府機関がこのようなダイバーシティ重視の姿勢を明確に打ち出すことは、素晴らしいと思います。
† 原文では、「anxiety disorder」ではなく単に「anxiety」と記述されているので、いわゆる「不安障害」よりも広範な、「不安な状態」全般を指すものと思われます。この記事ではご参考として、上述の自閉症スペクトラム、ディスレクシア、不安状態に対するウェブアクセシビリティ施策について、Dos (やるべきこと) に挙げられている項目を意訳してご紹介します。
自閉症スペクトラム (autistic spectrum)

- シンプルな配色にする。(use simple colours)
- 平易な言葉を用いる。(write in plain language)
- 簡潔なセンテンス (文) と箇条書きを用いる。(use simple sentences and bullets)
- ボタンのラベルを具体的に記述する。(make buttons descriptive)
- シンプルで一貫性のあるレイアウトにする。(build simple and consistent layouts)
ディスレクシア (dyslexia)

- 画像や図を用いてテキストを補足する。(use images and diagrams to support text)
- テキストは左詰め (均等割り付けではなく) で配置し、一貫性のあるレイアウトにする。(align text to the left and keep a consistent layout)
- 他の表現形式 (たとえば音声や動画) でも生成することを検討する。(consider producing materials in other formats (for example audio or video))
- コンテンツは短く、明快で、簡潔にする。(keep content short, clear and simple)
- 背景色と文字色のコントラストを、ユーザーが任意で変更できるようにする。(let users change the contrast between background and text)
不安状態 (anxiety)

- 操作を完遂させるのに十分な時間をユーザーに与える。(give users enough time to complete an action)
- 操作を完遂したときに、その後どうなるかを明示する。(explain what will happen after completing a service)
- 重要な情報は明確に提示する。(make important information clear)
- 操作を完遂するのに必要なサポートをユーザーに提供する。(give users the support they need to complete a service)
- 送信する前に、ユーザーが入力内容を確認できるようにする。(let users check their answers before they submit them)
原文で Don'ts (べからず) も併せ読むと、より理解が深まるかと思います。また、他の障害の種類についても Dos (べき) と Don'ts (べからず) がコンパクトにまとまっているので、興味のある方は、参考にしてみてはいかがでしょうか。
2019年7月20日追記 : このポスターの日本語版が出ました。詳しくは『ウェブアクセシビリティの「べき/べからず」ポスター (UK Home Office) 日本語版』をご参照ください。