見えにくい、読みにくい「困った!」を解決するデザイン

見えにくい、読みにくい「困った!」を解決するデザイン』を読みました。

見えにくい、読みにくい「困った!」を解決するデザイン

色、文字、ことば、図解、UI のビジュアルデザインについて、アクセシビリティ (あるいはユニバーサルデザイン、インクルーシブデザイン) の観点から「このように改善するとよい」をわかりやすくまとめた書籍です。

本書の大きな特長は、6人の登場人物 (年齢や生活様式、障害の有無など異なるコンテキストを抱える人たち) を立て、その人たちにとっての「困った!」を手がかりに「こうしよう!」というヒントを提示することで、デザイン成果物の向こう側にいるユーザーの多様性を、常に読者に意識づけようとしているところです。UX デザインのマントラに、「偽の合意」効果にうっかり陥らないための戒めとして「You are not the user (あなたはユーザーではない)」がありますが、本書はそれを地でゆく構成になっていると言えるでしょう。この6人の登場人物は、本書の「そで」(表紙のカバーの折り返しの部分) にも書かれており、また、本書の特設サイトでも参照できるようになっているので、読みながらいつでも立ち返りやすくなっています。

内容的には、上述の「色、文字、ことば、図解、UI」のデザインにおける、とりわけ「いかにしたら多様なユーザーに分け隔てなく情報を伝えることができるか」というエッセンスが、平易かつ簡潔にまとめられています。いわゆる「デザイナー」という職能に限らず、「人に何かを伝える」ことに関わるあらゆる人にとって、敷居の低いリファレンスとして重宝するでしょう。アクセシビリティやユーザビリティに興味を持ち始めた初学者にうってつけなのはもちろんのこと、ある程度心得がある人にとっても、いつでも基本に立ち返られるよう手元に置いておきたい良書だと思います。

以下、個人的に興味深く感じた、あるいは改めて学びになったところです。


また本書では、大変ありがたいことにコラム (P.32) で、デザイン支援ツール「インクルーシブなペルソナ拡張」をご紹介いただいています。6人の登場人物の視点を通じて多様なユーザーに別け隔てなく情報を伝えるデザインを学んだ皆さんが、実際にご自身のプロジェクトやサービス運用でペルソナを立てた際に、このツールがアクセシブルなプロダクト実現に少しでもお役に立てたとしたならば、とても嬉しいです。