XR Accessibility User Requirements (W3C First Public Working Draft)
W3C が、XR のアクセシビリティについて、ユーザー要求 (user requirements) をまとめ、ドキュメントを公開しています。
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XR Accessibility User Requirements - W3C Working Draft
- この記事で扱う2020年2月13日付の First Public Working Draft のアーカイブ URL は www.w3.org/TR/2020/WD-xaur-20200213/です。
XR とは、VR (virtual reality : 仮想現実)、AR (augmented reality : 拡張現実)、MR (mixed reality : 複合現実) の総称です。このドキュメントは、こうした没入型環境のインタラクションにおいて、アクセシビリティを担保するにはどうすればよいかを、ユーザー調査をもとに整理したものです。W3C の Accessible Platform Architectures (APA) Working Group によって作成され、本記事の執筆時点では Public Working Draft というステータスですが、広くフィードバックを集め、ブラッシュアップのうえ、最終的には Working Group Note として発行される予定す。
XR のアクセシビリティを担保するためには、多くの検討すべき課題があります。たとえば、特定の入力モダリティ (音声、キーボード、スイッチ、ジェスチャ、アイトラッキング ... による情報インプット) や出力モダリティ (触覚的、視覚的、聴覚的 ... な情報アウトプット) の使用が困難なユーザーの支援、モーション (体の動きの大きさや精緻さ) および位置取り (立ったり座ったり) に制約があるユーザーの支援、没入型環境におけるコンテキスト把握や認知上の困難に対する支援、などです。
- Immersive semantics and customization (没入型環境におけるセマンティクス。支援技術でも利用可能であることとそのカスタマイズ。)
- Motion agnostic interactions (特定の身体動作に依存しないインタラクション。)
- Immersive personalisation (認知/学習の負荷を軽減するための、没入型環境のパーソナライズ。)
- Interaction and target customization (インタラクションを行なうためのターゲットサイズのカスタマイズ。)
- Voice commands (身体動作が困難なユーザーの、音声コマンドの利用。)
- Color changes (色覚特性を持つユーザーのための、画面表示色の変更。)
- Magnification context and resetting (画面拡大表示を利用するユーザーによる、フォーカスのコンテキスト把握とリセット。)
- Critical messaging and alerts (画面拡大表示を利用するユーザーによる、重要メッセージや警告の把握。)
- Gestural interfaces and interactions (視覚障害者のための、ジェスチャーによるインターフェース利用。)
- Text description transformation (聴覚障害者で、書き言葉が第一言語でないユーザーのための、手話の提供。)
- Safe harbour controls (認知障害などで、情報に圧倒されたユーザーのための、「安全地帯」へのナビゲート。)
- Immersive time limits (認知障害などで、没入型環境におけるセッション時間制限が厳しい場合の、再設定。)
- Reset focus and orientation (画面拡大表示を利用するユーザーや認知/学習障害を持つユーザーが、フォーカスを見失ったり道に迷ったりするのを防ぐための、表示の設定や調整。)
- Routing to second screens (視聴覚障害を持つユーザーのための、点字ディスプレイなど他の情報入出力デバイスとの連携。)
- Interaction speed (運動障害や認知/学習障害を持つユーザーのための、インタラクションの速度の調整。)
- Avoiding sickness triggers (前庭障害、てんかん、光過敏症を持つユーザーの、発作の防止。)
- Binaural audio track alternatives (聴覚障害を持つユーザーのための、バイノーラルな音場の提供。)
- Subtitling customization (コンテキストに合わせて提供されるテキストのリフローや字幕の、表示カスタマイズ。)
上に挙げた各ケースは、最終的な Working Group Note に向けて変更される可能性がありますが、現時点における VR、AR、MR に求められるアクセシビリティ要件を俯瞰するうえでは、十分参考にできるかと思います。