スクリーンリーダー利用に関するトレンド : 2023年12月~2024年1月実施の WebAIM 調査より

ウェブアクセシビリティ向上のために活動している米国の非営利団体 WebAIM (Web Accessibility in Mind) による、恒例のスクリーンリーダー利用者調査 (第10回) の結果が発表されました。WebAIM サイトの「Screen Reader User Survey #10 Results」でご覧いただくことができます。

この記事では WebAIM 発表の調査結果の中から、私自身が興味深く感じた事項を中心に、スクリーンリーダー利用に関するトレンドについてまとめたいと思います。

調査の概略

本調査は2023年12月~2024年1月にウェブアンケート形式で行なわれました。前回 (第9回) の調査期間は2021年5月~6月だったので、約2年半ぶりの調査、ということになります。

有効回答数は1,539人 (前回調査より29人減少) で、回答者の地域属性は、北米が47.2%、欧州が30.7%、アジアが6.4%、南米が6.3%、アフリカ/中東が4.8%、豪州/オセアニアが3.3%、中米/カリブ海地域が1.3%、となっています。

スクリーンリーダーの習熟度については、上級者が58.3%、中級者が36.0%、初心者が5.7%、という内訳です。また、インターネットの習熟度については、上級者が71.8%、中級者が26.4%、初心者が1.8%、という内訳です。

PC のスクリーンリーダー

PC のスクリーンリーダーは JAWS と NVDA のユーザーがもっとも多く、「メインで利用するスクリーンリーダー (primary desktop/laptop screen reader)」としては JAWS が40.5%、NVDA が37.7%、となっており、また「普段よく使うスクリーンリーダー (desktop/laptop screen readers commonly used)」としては NVDA が65.6%、JAWS が60.5%、となっています。

VoiceOver (Mac) や Narrator は、「メインで利用するスクリーンリーダー」としてはごくわずかですが、「普段よく使うスクリーンリーダー」としてはそれぞれ43.9%、37.3%、となっており、JAWS や NVDA に次ぐ存在感を見せています。

PC におけるスクリーンリーダーとブラウザの組み合わせ

スクリーンリーダーと併用する PC 用ブラウザは Chrome がもっとも多く (52.3%)、Microsoft Edge (19.3%)、Firefox (16.0%) が続く格好になっています。

スクリーンリーダーとブラウザの組み合わせで見ると JAWS + Chrome がもっとも多く (24.7%)、次いで、NVDA + Chrome (21.3%)、JAWS + Edge (11.4%)、NVDA + Firefox (10.0%)、VoiceOver + Safari (7.0%)、NVDA + Edge (5.0%)、JAWS + Firefox (2.6%)、となっています。

無料 (または低コスト) のスクリーンリーダーに対する評価

「無料または低コストのデスクトップ用スクリーンリーダーは、現状、高価な市販のスクリーンリーダーの代替となり得ると思うか? (Do you see free or low-cost desktop screen readers as currently being viable alternatives to more expensive commercial screen readers?)」という設問に対し、「はい」が78.1%、「いいえ」が12.1%、となっています。

WebAIM の分析によると、実際に無料 (または低コスト) のスクリーンリーダーを使っているか否かで、この評価は顕著に分かれる傾向があるようで、NVDA ユーザーでは 94%、VoiceOver ユーザーでは 91%、という具合に実ユーザーの間では圧倒的に「はい」が多いそうです。

モバイルのスクリーンリーダー

「メインで利用するモバイルプラットフォーム (primary mobile/tablet platform)」としては、Apple (iPhone や iPad) が70.6%ともっとも多く、次いで Android (27.6%)、Chrome OS (0.5%) ... と続きます。これに伴い「普段よく使うモバイル用スクリーンリーダー (mobile/tablet screen readers commonly used)」も、VoiceOver がもっとも多く (70.6%)、次いで TalkBack (34.7%) となっています。

ただし、モバイルプラットフォームのシェアには地域差があるようで、iOS (Apple) デバイスの使用率は、北米、豪州、欧州で高く (それぞれ、84%、75%、72%)、アジア、アフリカ/中東、南米では低い (それぞれ、40%、34%、31%) という結果になっています。グローバルなウェブサイトでは特に、Android 環境 (TalkBack) でのアクセシビリティも抜かりなく担保したいところです。

情報探索の手がかり (見出しおよびランドマーク)

「長いウェブページで情報を探そうとするとき、次のうちどれを最初に行う可能性が高いか? (When trying to find information on a lengthy web page, which of the following are you most likely to do first?)」という設問に対しては、「ページ内の見出しをナビゲートする」人が突出して多く (71.6%)、関連して「見出しでページをナビゲートするとき、見出しレベルはどのくらい有用か? (When navigating a web page by headings, how useful are the heading levels to you?)」という設問に対しては、「とても有用 (Very useful)」と答えた人が57.0%、「ある程度有用 (Somewhat useful)」と答えた人が31.8%で、合わせて9割近くにのぼる結果となっています。基本的なことですが、やはり見出しのマークアップを適切に行うことは、アクセシビリティを担保するうえで不可欠と言えるでしょう。

また、WAI-ARIA ランドマークの利用についても、「あればいつでも使う (Whenever they're available)」と答えた人が17.9%、「よく使う (Often)」と答えた人が13.9%、「時々使う (Sometimes)」と答えた人が31.5%、となっており、合わせて6割を超えています。見出しと併せて、ランドマークも適切に実装したいところです。

アクセシビリティ問題を引き起こしやすい事項

本調査では、ウェブのアクセシビリティ問題を引き起こしやすい事項 (problematic items) について、選択肢の中から3つ (順位付けした形で) 回答者に選ばせています。上位に挙がっている項目は以下のとおりですが、とりわけ CAPTCHA は突出して多く選ばれているという結果になっています。

  1. CAPTCHA
  2. インタラクティブな要素 (メニュー、タブ、ダイアログなど) が意図どおりに動作しないこと
  3. 意味が理解できないリンクやボタン
  4. 画面が予期せず変化すること
  5. キーボード操作によるアクセシビリティの不備

また、以下の項目はランキングとしては比較的下位ではありますが、いずれもウェブアクセシビリティの基本として、併せて抜かりなく予防したいものです。


当サイトでは2009年の第1回目からこの調査に注目していますが、グローバルにスクリーンリーダーの利用者事情を俯瞰できるよい機会になっています。今後も引き続き、ウォッチしてゆきたいと思います。