JIS X8341-3:2010が正式に公示

この記事の公開日の前日(2010年8月20日)、WebアクセシビリティのJIS規格である「JIS X8341-3」(高齢者・障害者等配慮設計指針 - 情報通信における機器、ソフトウェア及びサービス - 第3部:ウェブコンテンツ)の改正版が正式に公示されました。改正した年を規格番号の末尾に付記する形で「JIS X8341-3:2010」と呼ばれます(以前、改正原案のパブリックコメントの受け付について触れた時点では2009年に公示される予定でしたが、さらに一年、じっくり時間をかけて練り上げられたものです)。

初版の「JIS X8341-3」は2004年6月20日に公示されているので、今回の改正は、6年ぶりになります。他のJIS規格と同様、「工業標準化法」第67条(日本工業規格の尊重)により、国および地方自治体に影響を及ぼす指針となっています。とはいえ、国や自治体だけに限らず、あらゆるWebサイトが遵守して欲しい内容になっています(内容的には、Webアクセシビリティを実現するためにはどういうことに留意すればよいかについて、網羅的にまとめられているので、自サイトのアクセシビリティを確認する上でとても参考になります)。ちなみに、規格番号「X8341」の由来は「やさしい」だそうです。アクセシブルでユーザーに優しいサイトの実現に向けて、少しずつでも、取り組んでゆきたいものです。

さて、今回改正された「JIS X8341-3:2010」は、Web標準仕様の策定機関 W3C(World Wide Web Consortium)より勧告されている「WCAG 2.0」をベースにしています(参考記事:改正JIS X8341-3のベース「WCAG 2.0」とは?「WCAG 2.0」の読みかた)。

守るべき指針として定められていうるガイドラインは、基本的にWCAG 2.0のそれと同じだそうなので、JIS X8341-3:2001を遵守することがすなわち、国際的なWebアクセシビリティのスタンダードに準じること、と言えます。WCAG 2.0のキーコンセプトのひとつに「Testability(客観的に検証できること)」というのがありますが、それに伴い今後、様々なテストツールが出てくることが予想されます(現時点でも、前景色と背景色のコントラスト比を確認できる「Contrast Analyser」などがあります)。こういったツールを、JIS X8341-3:2001の準拠チェックにも流用できるのは、大きなメリットと言えますね。もちろん、チェックツールでの検証をパスすれば完璧、というわけではありませんが...。

JIS X8341-3:2010の閲覧方法ですが、JISC(日本工業標準調査会)のサイトからアクセスすることができます。このサイト内の「JIS検索」というページに、「JIS規格番号からJISを検索」というエリアがあるので、そこで「x8341-3」と入力して検索をかければ、PDF形式で、JIS X8341-3:2010を開いて見ることができます。なお、このPDFファイルは、ダウンロードしたりプリントアウトしたりすることはできません(また、2010年8月21日現在、Mac ではこのPDFファイルを正常に表示することができないようです)。お手元に置いておきたい場合は、JSA(日本規格協会)のWebストアで購入することができます(冊子およびPDFの形で販売しています)。

JIS X8341-3:2010の背景について、もっと知りたい方は、実際にこの規格を策定された方による執筆記事や発表資料があるので、そちらをご覧いただくと、より理解が深まると思います。一例をご紹介します。

また、JIS X8341のオリジナル版(2004年版)の策定に関わられた濱田英雄さんも、今回の改正版(2010年版)でどう変わるかについて、ご自身のサイト(濱田ウェブアクセシビリティ研究所)の中でわかりやすくまとめられています

私自身は、近日中に開催される JIS X8341-3:2010 関連のセミナーにいくつか参加する予定なので、そこで得られた知見を、改めて当サイトでもレポートさせていただきたいと考えております。