WCAG 3.0 (W3C Working Draft 2026年3月3日版)

W3C にて策定作業が行われている W3C Accessibility Guidelines (WCAG) 3.0 の Working Draft が、2026年3月3日付で更新されました。前回の Working Draft が2025年9月4日付なので、半年ぶりの更新になります。

この記事では、改めて WCAG 3.0 の概略をおさらいしつつ、今回の Working Draft の変更点、ならびに現時点でのガイドライン案を俯瞰してみたいと思います。

WCAG 3.0 の概略

WCAG 3.0 の説明文書「Explainer for W3C Accessibility Guidelines (WCAG) 3.0」を見ると、WCAG 3.0 の構成や、適合についての考えかたが解説されています。ここでは簡単にサマリーします。

WCAG 3.0 の構成

WCAG 3.0 は、以下のような構成になっています (参考 : 「Explainer for WCAG 3.0」の 5. WCAG 3 Structure)。

各 Guideline (ガイドライン) の下には Requirements (要件) があり、Requirements には、Core (主要) のものと Supplemental (補足的) のものがあります。Guideline によっては、Requirements に加えて Assertions (表明) がある場合もあります。この Assertions というのは、プロダクトの運用主体による文書化された表明で、アクセシビリティを担保 / 強化するための特定の手順 (トレーニング、運用プロセス、ユーザビリティテスト、ヒューリスティック評価、支援技術を用いたウォークスルー、など) を適切に踏んだ旨を表明するものです (参考 : 「Explainer for WCAG 3.0」の 5.3 Assertions)。また一部の Guidelines には、参考情報として Best Practices (ベストプラクティス) が含まれるものもあります。

そして WCAG 3.0 には、参考情報 (関連文書) として、How to Documents (解説文書) と Methods (方法) が予定されています。それぞれ、従来の Understanding (WCAG 2.x 解説書) と Techniques (WCAG 2.x テクニック集) に相当するものと思われます。

Requirements や Assertions のテストに際しては、それぞれに対しておそらく試験範囲が定義されると思われます。「Explainer for WCAG 3.0」の「6. Testing」の章の 6.3 Scope) を見ると、試験範囲の想定として、items (個々のインタラクティブなコンポーネント、ラベル、エラーメッセージ、アイコン、画像、など)、views (ウェブページやアプリの各画面)、task flow (特定のユーザー行動のための一連の views のつながり)、product (ウェブサイトやアプリの全体) が検討されています。

適合についての考えかた

WCAG 3.0 の適合についての考えかたですが、上述の Core Requirements (主要要件)、Supplemental Requirements (補足要件)、および Assertions (表明) に基づく適合モデルが検討されています (参考 : 「Explainer for WCAG 3.0」の 7. Conformance Approach)。Guidelines の中で規定された Core Requirements (主要要件) をすべて満たすことが、概ね、従来の WCAG 2.x のレベル AA への適合に相当するようです。

WCAG 3.0 における適合レベルは、(従来の A、AA、AAA に代わり) BronzeSilverGold という格付けが検討されています。

なお、上述の適合レベルに具体的にどのように影響するかは明示されていませんが、WCAG 3.0 では、Issue severity (問題の深刻度) という尺度を用いたスコアリングや、Adjectival ratings (形容詞的評価)、つまり単純な Pass / Fail ではなく、Fail (失敗した)、Progress (合格手前の途上である)、Pass (合格した)、Better (より優れている)、Exceptional (卓越した) のような段階的評価の導入も検討されています。

functional performance statements とは?

上述の適合レベル (Bronze、Silver、Gold) を満たす条件として、今回のドラフトでは新たに functional performance statements という概念が提示されています。これは、利用者に身体的または認知的な「機能 (function)」の制約があってもアクセシブルであるために、プロダクトが満たすべき状態を記述したもの、と言えそうです。Working Draft の 3.3 Functional performance statements (expanded) を見ると、たとえば Usage without vision、Usage without hearing、Usage with limited memory ... といったステートメント項目の一覧が挙げられています。vision (視覚)、hearing (聴覚)、memory (記憶) などがここで言う「機能 (function)」に該当し、functional performance statements は、こうした各機能の有無や程度に起因する制約をもとに記述されるものと思われます。

ちなみにこの functional performance という用語は、米国リハビリテーション法508条で用いられている「Functional Performance Criteria (FPC)」が由来のようです。

そして個々の Core Requirements (主要要件)、Supplemental Requirements (補足要件)、および Assertions (表明) にはそれぞれ、一つ以上の functional performance statement が紐づくようです。イメージとしては、「機能 (function)」の制約をもとに記述されたステートメントごとにアクセシビリティの Requirements (要件) が定義され、それらの Requirements はレベル付けがなされ (この Requirement は Bronze 相当、この Requirement は Silver 相当、といった具合?)、そのうえで各 Requirements が Guidelines (ガイドライン) の下に展開される、という建て付けになるものと思われます。

今回の Working Draft の変更点

前回の Working Draft との差分 (diff) を見ると、今回の Working Draft でも多くの変更が加えられていることが見て取れますが、主な変更点を挙げると以下のようになるかと思います。

今回の Working Draft のガイドライン案

以上を踏まえたうえで、WCAG 3.0 のガイドライン案を見ると、少しは理解しやすいかもしれません。今回の Working Draft で暫定的に規定されている Guidelines (ガイドライン)、およびその下にある Core Requirements (主要要件)、Supplemental Requirements (補足要件)、Assertions (表明) の各項目を、下記にリストアップしてみました。それぞれ、ドラフト原文にリンクしていますので、ご興味あれば機械翻訳なども使いつつ眺めてみるとよいかと思います。


以上です。Accessible & Usable では引き続き、WCAG 3.0 の動向をウォッチしつつ、情報をアップデートしてゆきたいと思います。