WCAG 3.0 (W3C Working Draft 2025年9月4日版)
W3C にて策定作業が行われている WCAG 3.0 (W3C Accessibility Guidelines) の Working Draft が、2025年9月4日付で更新されました。前回の Working Draft が2024年12月12日付なので、9か月ぶりの更新になります。
この記事では、改めて WCAG 3.0 の概略をおさらいしつつ、今回の Working Draft の変更点、ならびに現時点でのガイドライン項目 (暫定) を俯瞰してみたいと思います。
WCAG 3.0 の概略
「Explainer for WCAG 3.0」を見ると、WCAG 3.0 の構成や、適合についての考えかたが解説されています。ここでは簡単にサマリーします。
WCAG 3.0 の構成
WCAG 3.0 は、以下のような構成になっています (参考 : 「Explainer for WCAG 3.0」の 5. WCAG 3.0 Structure)。
- Guidelines (ガイドライン) - normative (規定)
- Foundational Requirements (基礎要件) - normative (規定)
- How to Documents (解説文書) - informative (参考情報)
- Methods (方法) - informative (参考情報)
- How to Documents (解説文書) - informative (参考情報)
- Supplemental Requirements (追加要件) - normative (規定)
- How to Documents (解説文書) - informative (参考情報)
- Methods (方法) - informative (参考情報)
- How to Documents (解説文書) - informative (参考情報)
- Assertions (表明) - normative (規定)
- How to Documents (解説文書) - informative (参考情報)
- Foundational Requirements (基礎要件) - normative (規定)
各 Guideline (ガイドライン) の下には Requirements (要件) があり、Requirements には、Foundational (基礎的) のものと Supplemental (追加的) のものがあります。また Guideline によっては、Requirements に加えて Assertions (表明) がある場合もあります。この Assertions というのは、プロダクトの運用主体による文書化された表明で、アクセシビリティを担保 / 強化するための特定の手順 (トレーニング、運用プロセス、ユーザビリティテスト、ヒューリスティック評価、支援技術を用いたウォークスルー、など) を適切に踏んだ旨を表明するものです (参考 : 「Explainer for WCAG 3.0」の 5.3 Assertions)。
そして WCAG 3.0 には、参考情報 (関連文書) として、How to Documents (解説文書) と Methods (方法) が予定されています。それぞれ、従来の Understanding (WCAG 2.x 解説書) と Techniques (WCAG 2.x テクニック集) に相当するものと思われます。
Requirements や Assertions の試験に際しては、それぞれに対しておそらく試験範囲が定義されると思われます。「Explainer for WCAG 3.0」の「6. Testing」の章の 6.3 Scope) を見ると、試験範囲の想定として、items (個々のインタラクティブなコンポーネント、ラベル、エラーメッセージ、アイコン、画像、など)、views (ウェブページやアプリの各画面)、task flow (特定のユーザー行動のための一連の views のつながり)、product (ウェブサイトやアプリの全体) が検討されています。
適合についての考えかた
WCAG 3.0 の適合についての考えかたですが、上述の Foundational Requirements (基礎要件)、Supplemental Requirements (追加要件)、および Assertions (表明) に基づく適合モデルが検討されています (参考 : 「Explainer for WCAG 3.0」の 7. Conformance Approach)。Guidelines の中で規定された Foundational Requirements (基礎要件) をすべて満たすことが、概ね、従来の WCAG 2.x のレベル AA への適合に相当するようです。より高いレベルへの適合には、Supplemental Requirements (追加要件) や Assertions (表明) を満たすことが求められます。
WCAG 3.0 における適合レベルは、(従来の A、AA、AAA に代わり) Bronze、Silver、Gold という格付けが検討されています。
- Bronze
- WCAG 3.0 に適合するための最低限のレベル。適用対象となるプロダクトが、障害者の機能的ニーズを満たし公平性を高めるのに十分な Requirements および Assertions を満たす必要がある。
- 著者注 : Foundational Requirements だけを満たす (つまり従来の WCAG 2.x レベル AA に相当する) だけでは、この Bronze レベルには届かない、ようにも読み取れます (?)。
- WCAG 3.0 に適合するための最低限のレベル。適用対象となるプロダクトが、障害者の機能的ニーズを満たし公平性を高めるのに十分な Requirements および Assertions を満たす必要がある。
- Silver
- 組織が、Bronze レベルを満たすことにとどまらない、さらなるアクセシビリティ向上ができると認められたレベル (?)。
- Gold
- Silver レベルに適合した組織が、模範的で最先端なロールモデルとして突出していると認められたレベル (?)。
上述の適合レベルに具体的にどのように影響するかは明記されていませんが、WCAG 3.0 では、Issue severity (問題の深刻度) という尺度を用いたスコアリングや、Adjectival ratings (形容詞的評価)、つまり単純な Pass / Fail ではなく、Fail (失敗した)、Progress (合格手前の途上である)、Pass (合格した)、Better (より優れている)、Exceptional (卓越した) のような段階的評価の導入も検討されています。
今回の Working Draft の変更点
前回の Working Draft との差分 (diff) を見ると、今回も多くの変更が加えられていますが、変更点のサマリーとしては Change log にまとまっています。
大きな変更としては、各 Guidelines の下に紐づく Requirements および Assertions が、かつては「Exploratory (検討段階)」と「Developing (開発段階)」のものが混在していたところ、ひととおり「Developing (開発段階)」というステータスになっている、というのがあります。これは「作業部会の中で項目としては概ね合意が得られているが、主要な懸念事項についてはこれから解決する状態」というステータスで、この後「Refining (精製段階)」「Mature (成熟段階)」と進む手前の段階になります。なお、(Working Draft の手前のドラフトである) Editors Draft を見ると「Exploratory (検討段階)」の Requirements および Assertions が散見されるため、今後のアップデートで Requirements および Assertions が増える可能性はありそうです。
Change log にはまた、「Explainer for WCAG 3.0」の Assertions のセクションも更新されたとあります。ひとつ目についたのは、以下の Editor's Note (編集者の注記) が追加されていることです。
W3C will explore providing an assertion statement formatter that organizations may use to create properly formatted assertions for use on websites and other public documents.
W3Cにて、Assertions を作成するのに利用できるフォーマットの提供を検討するとのことで、これが具現化されると、Assertions とはどういうものかが、よりイメージしやすくなりそうです。
WCAG 3.0 のガイドライン項目の一覧
以上を踏まえたうえで、今回の WCAG 3.0 Working Draft でリストアップされている Guidelines の項目を見てみると、以下の通りになります。今後も変更が入ると思いますが、上述の通りいずれも Development というステータスなので、 Guidelines の全体像を俯瞰するには良い頃合いかもしれません (そうでないかもしれませんが)。
Guidelines の項目名には参考までに仮訳を付けていますが、実際にリンクを辿って Working Draft の原文にアクセスしてみて、列挙されている Foundational Requirements (基礎要件)、Supplemental Requirements (追加要件)、Assertions (表明) をざっと併せ見ることで、各 Guideline の意図をより解像度高く汲み取ることができるかと思います。機械翻訳でも雰囲気はつかめるので、ご興味あれば一度眺めてみるとよいでしょう。
- Image and media alternatives (画像およびメディアの代替)
- Text and wording (テキストおよびワーディング)
- Interactive components (インタラクティブなコンポーネント)
- Input / operation (入力 / 操作)
- Error handling (エラーの処理)
- Animation and movement (アニメーションおよび動き)
- Layout (レイアウト)
- Consistency across views (ビュー横断的な一貫性)
- Process and task completion (プロセスおよびタスクの完遂)
- Policy and protection (ポリシーおよび保護)
- Help and feedback (ヘルプおよびフィードバック)
- User control (利用者による制御)
以上です。Accessible & Usable では引き続き、WCAG 3.0 の動向をウォッチしつつ、情報をアップデートしてゆきたいと思います。